しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「一面コラム」雑感

昨日のこの日記で、名コラムニスト・深代惇郎さんが43年前の8月下旬に書いた、

朝日新聞一面コラム「天声人語」について書きました。

その「天声人語」、今日は「高原野菜・ルバーブ」についての話題で、

コラムの始まりと終わりは次のような文章でした。


『八ケ岳から涼風が吹き、はるか南には富士山も見える。

 標高1千メートルの長野県富士見町で栽培される高原野菜がある。ルバーブだ。

 大地から伸びる茎の鮮やかな紅色が目に飛び込む。

 フキに似た野菜で、ジャムや洋菓子、肉料理のソースが評判を呼ぶ。

 シベリア原産で熱や日差しに弱く、冷涼な土地でしか栽培できない。

 富士見町では十数年前から「ルバーブで町を売り出そう」と栽培者を増やした。

 生産量で日本一となったのは、都会からの移住組がその輪に加わったことも大きい。

 その一人がルバーブ生産組合の販売部長三宅満さん(69)だ。

            ~ (中略) ~

 ルバーブの別名は「食用大黄(だいおう)」。消化を促す薬効で知られる「大黄」の近縁種である。

 カナダが舞台の小説『赤毛のアン』にも登場する。

 食欲の衰えた高齢女性にアンがゼリーを届ける。

 20世紀初めの欧米でも、その効果が知られていたのだろうか。

 富士見町のルバーブ畑で、三宅さん夫妻が育てた1本を生でいただいた。

 強い酸味に驚くが、少しも後をひかず、爽快感だけが残る。

 一陣の風のような涼味に、地上の猛暑を忘れた。』


この文章のなかで、特に印象が強かったのは、

「一陣の風のような涼味に、地上の猛暑を忘れた」といセンテンスでした。

深代さんから数えて、今のコラムニストが何代目になるのか承知していませんが、

最近の「天声人語」は、印象に残るようなフレーズやセンテンスが、

徐々に少なくなっているような気がします。

むしろ、最近は、日経新聞一面コラム「春秋」の方が、読み応えがあるような気がして‥‥。

それはたとえば、「菅井きん」さんへの、次のような追悼コラムです。


『「女優は美人がなるものだ」という父親の反対を押し切って演劇界へ。

 30代から老け役が多く、鉛筆でしわを描いたり丸めた座布団を背中に入れたり。

 顔に本当のしわができた時は「これで無理をしなくていい」とほっとした。

 変わらぬたたずまいでずっと画面の中にいるような気がしていた菅井さんが、今月亡くなった。

 10年前の公開作では世界最高齢の映画主演女優としてギネスに認定された。

 水上スキー、飛行機の操縦、水泳、太極拳と、年を重ねてからも好奇心や行動力は旺盛なまま。

 「負けるんじゃないぞ。踏まれても踏まれても生えてくる雑草になれ」。

 ドラマ「家なき子」で薄幸の少女を励ましたせりふが、92年の生涯と重なる。』


この文章のなかでは、

「変わらぬたたずまいでずっと画面の中にいるような気がしていた菅井さん」と

「ドラマ「家なき子」で薄幸の少女を励ましたせりふが、92年の生涯と重なる」

という文章表現に、コラムニストの人情味あふれる「個性」というものを感じました。

ということで、「天声人語」を読みたい一心で、

朝日新聞デジタルselect on Yahoo!ニュース」を毎月購入している私は、

どちらが「天声人語」の文章なのか、錯覚してよく分からなくなりました‥‥。