一昨日26日の産経新聞「正論」に掲載された
中西輝政・京大名誉教授の『第一次大戦が今の怪物を生んだ』というタイトルの論評は、
とても格調の高い内容だと思いました。
そこで、私の特に印象に残った箇所を、少々長くなりますが、
この日記をメモ代わりにして、次のとおり書き残しておこうと思います。
・この11月11日、世界は第一次大戦の終結からちょうど100年を迎えた。
この日の午前11時からパリの凱旋(がいせん)門前で開かれた式典には、
80人以上の首脳や国際機関のトップが参加し、
フランスのマクロン大統領をはじめドイツのメルケル首相、アメリカのトランプ大統領、
ロシアのプーチン大統領などもこぞって顔をそろえた。
・歴史に「イフ」は許されないが、あえて言えばもしあの時、
第一次世界大戦が起こらなかったら、ロシア革命は決して起こらず、
ソ連はこの地上に誕生しなかったであろう(つまり、中国や北朝鮮が共産国家となることもなかったはず)。
同じように、ウィーン会議(ナポレオン戦争後の1814~15年にウィーンで開かれた講和会議)以来、
文字通り「100年の平和」を享受していた当時のヨーロッパで、
第一次大戦がもしあのタイミングで勃発するのを避けられていたら、
イギリスの後を襲ってアメリカが覇権国として20世紀の世界をリードすることは、
おそらくなかったであろう。
・大英帝国衰退の最大の原因は、何をおいても、第一次大戦による国力の根本活力の喪失であったからだ。
しかもその第一次大戦の勃発は、まさに「世界史の過失」としか表現できないような、
そして今も歴史家たちが「夢遊病者たちが起こした戦争」(クリストファー・クラーク)と評するほど、
全く訳のわからない原因によって起こった戦争だったのである。
それは平和がいかにつまらない理由で簡単に崩壊するか、ということをわれわれに教えている。
・そしてその戦争によって始まった20世紀の世界史は、
動乱に次ぐ動乱、「戦争と革命の世紀」となったのである。
実際、この100年は、世界恐慌と第二次大戦そして冷戦、
さらには数え切れないほど多くの地域紛争と民族対立が繰り返された100年となった。
・第一次大戦が世界史の中に産み落とした2つの「怪物」、
つまり中ソなどの共産主義体制と「パクス・アメリカーナ」が21世紀の今日も、
なお世界史的な平和(パクス)を依然として「人類の夢」のままにしている。
そして今、この2つの「怪物」が決着をつける最終戦争へ向かいつつあるのか、
と思わせるような米中2大超大国の対立が深刻化し始めたようにも見える。
う~む、なるほど‥‥。20世紀は、「過失」から始まったのですね‥‥。
いゃあ~それにしても、「第二次大戦の原因をほんの少しばかり巨視的に見ると、
第一次大戦を終わらせた講和条約(大戦終結の半年後に調印されたベルサイユ条約など)こそが、
第二次大戦をもたらした直接の原因だったことがわかる。」という中西教授のご指摘は、
国際政治とその歴史を理解するうえで、とても勉強になりました。
そして、中西教授が、高坂正堯さんの高名な門下生のお一人で、その直接の後継者であることが、
この論評を読んで、なんとなく分かるような気がしました。