この一か月、日経新聞文化欄で連載が続いていた
石原邦夫・東京海上日動火災保険相談役の「私の履歴書」は、今日31日が最終回でした。
そこでは、次のような、心打たれる記述がありました。
『今日の自分があるのは誰のおかげか。
2018年春の叙勲で、旭日大綬章を授かる栄誉に恵まれた。
幕末の賢侯、松平慶永(春嶽)の言を引き、
そのときの気持ちを「常に衆言を聴きて宜(よろ)しきところに従ふ」と表現した。
連載では具体的な名前を記さなかったが、多くの友人や同僚、先輩、
そして会社のスタッフのみんなの助言に支えられてきた。
再び春嶽の言葉を借りれば、「我に才略無く我に奇無し」。
つねにそう自らを戒めてきたからこそ、感謝の気持ちでいっぱいだ。
長い間、多くの顧客と代理店の皆様に支えられてきた。
北海道本部長になったとき、
ある代理店に「どんな社員が頼りになりますか」と聞いてみたことがある。
答えは「ともに泣き、ともに笑ってくれる人」。至言だと思う。
苦楽をともにしたもの同士の共感が勇気を与えてくれた。』
う~む、なるほど‥‥。
「我に才略無く我に奇無し」ですか‥‥。私の理想とする生き様ですね‥‥。
でも、こういう仕事人生を送ってきたのかと自問自答すると、忸怩たる思いがあります。
ちなみに、YOMIURI ONLINEの「名言巡礼」には、松平春嶽の
「我に才略無く我に奇無し。常に衆言を聴きて宜よろしき所に従ふ」について、
次のような解説がありました。
『「才知に富んだはかりごとも奇抜な考えもない」と自らを称する春嶽だが、
様々な局面で意見を求められ、頼りにされた。幕政改革では新設の政事総裁職に請われる。
坂本龍馬とは「私政」に代わる「公共の政」が難局打開の最善策だとの認識を共にする。
大久保利通は第2次長州征討回避に向けた協力を求めた。
「常に周りの意見をよく聴いて、良い方向を見いだすまでだ」という春嶽だからこそ、
頼りにされたのだろう。』
また、「苦楽をともにしたもの同士の共感が勇気を与えてくれた」というのも、
まことにもってそのとおりですね‥‥。「人生意気に感ず」です。
そういう得難い同士に巡り会えた人は、
ただそれだけで、人も羨む、とても幸せな人生なのだと思います。