日経新聞電子版「スキルアップ塾」で連載中の『あの天才がなぜ転落?』は、
一度は成功者として脚光を浴びながら、転落、
富も名声も失って貧しく寂しい最期を迎えた天才たちの生涯と「失敗の本質」を分析するものです。
第1回と第2回で取り上げられたのはカリフォルニアで大農場を持ちながら、
ゴールドラッシュで転落したジョン・アウグスト・サッター。
そして、第3回と第4回で取り上げられるのは、
「再建の神様」として佐世保重工業など数多くの企業を再建させ、
資産額数千億円と言われていた坪内寿夫さんです。
今月3日に掲載された第3回目の記事では、
坪内さんが「再建の神様」と呼ばれるまでの経緯が書かれていたのですが、
そのなかでも、経営再建術についての作家・遠藤周作さんとの対談の様子が、次のように紹介されていました。
『坪内の経営再建はどのようなものだったのか。
作家の遠藤周作との対談で、坪内は具体的な経営再建術を明かしている。
「現状打破」と「少数精鋭」が、企業再建の根本だと坪内は語る。
「2人でできるところを5人でやっとるでしょう。
その場合は人が5人おるというだけで弊害の方が多い。邪魔するわけですよ」というのだ。
これに対して遠藤は、「しかし、その少数も、仕事のできない人ではだめですね。精鋭じゃなくちゃ」
と応じる。少数にするのはいいが、その少数が精鋭かどうかは、分からないのではないかというわけだ。
これに対する坪内の返答に、遠藤は驚かされる。
「それは、先生ね、少数にしたら精鋭になるんですわ」というのだ。
この答えに、「なるほどォ。自分に責任がかかってくるから‥‥」と、感心しきりの遠藤。
「そうそう。みんな『精鋭』ということにこだわるんですがね、
やっぱり人間には『張り気』がありますからね、5人でやっておったのを、お前一人でやれいうたら、
やれるんですよ」と、持論を展開する坪内は、佐世保重工業の経営再建でもこれを実施した。』
う~む、なるほど‥‥。
でも、「少数にしたら精鋭になる」というのは、どの時代の、どの組織にも通用するものなのかしら?
今なら「ブラック企業」と呼ばれるリスクがあるかもしれませんね‥‥。
ところで、坪内さんは記事に書かれているように、私の故郷、伊予郡松前町の出身です。
松前町が生んだ偉人としては、義農作兵衛(ぎのうさくべえ)が有名ですが、
そのほかにも、白石春樹・元愛媛県知事や、今回の坪内さんの名前も挙げられると思います。
(もっとも、同じ松前町出身と言っても、私が現役県庁職員の頃は、
白石さんと坪内さんのお二人は、敵対関係にありました。)
次回の第4回目は、坪内さんの転落とその失敗の理由を経営学的視点で分析するとのことですが、
どのようなことが書かれるのか、郷土の出身者だけに、今から楽しみです。