しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

私のお気に入りの詩

一昨日、勤労感謝の日日経新聞一面コラム「春秋」に、

茨木のり子さんの詩が引用されていました。コラムの全文を引用させていただきます。


『タイトルは「六月」。しかしこの詩はきょうの「勤労感謝の日」にぴったりだろう。

 「どこかに美しい村はないか 一日の仕事の終りには一杯の黒麦酒 鍬を立てかけ籠を置き

 男も女も大きなジョッキをかたむける」。茨木のり子さんが残した作品のひとつである。

 ひたむきな労働と、おおらかな休息のすがすがしさを描いて間然するところがない。

 かつての新嘗祭(にいなめさい)は勤労の成果としての収穫を神に感謝した。

 戦後、これを受け継いだ勤労感謝の日はそれを生みだす人と行為への賛歌である。

 この詩のなかの村も、みんなが鍬を持ち、だれもが籠を背負い、わだかまりなく働く理想郷だ。

 現実に目を移せば、かけ声だけはすっかり耳慣れた「働き方改革」の行方が見えぬ。

 長時間労働を追放する。女性やシニアの活躍を促す。多様性を重んじる。働く場所を柔軟にする。

 大いに結構だが、さて具体的にどうするか、いつまでに何を実現するのかは曖昧だ。

 形式は整えたものの、意識はどれほど変わったことか。

 上司が帰るまでは部下も帰らない。以前はこうだった。

 昨今の朝型勤務では、上司が早く来るからもっと早く‥‥となる。

 「どこかに美しい人と人との力はないか 同じ時代をともに生きる 

 したしさとおかしさとそうして怒りが 鋭い力となってたちあらわれる」。

 詩人のうたった共同体には遠いニッポン社会である。』


このコラムを読んで、書棚から『茨木のり子詩集』(岩波文庫)を取り出してみました。

その本には付箋がいくつか貼ってあって、

コラムで引用されていた「六月」というタイトルの詩にも、しっかりと付箋が貼ってありました。

この時の自分は、この詩にどんな感想を持って、付箋を貼ったのでしょう‥‥?

なかなか思い出すことができません。


このほかにも、「わたしが一番きれいだったとき」「自分の感受性くらい」「さくら」

「倚りかからず」「行方不明の時間」「時代おくれ」などの詩が、私のお気に入りの詩です。

とりわけ、「さくら」のなかの「死こそ常態 生はいとしき蜃気楼と」という言葉が、

今でも強く印象に残っています。


そして、茨木のり子さんといえば、

ご自身が書かれた『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書)や

その評伝『清冽~詩人茨木のり子の肖像』(後藤正治著:中公文庫)という

一読をお薦めしたい名著があります。ご参考までに‥‥。