第162回芥川賞が、今日の夕、受賞者が決まるとのことで、
今朝の日経新聞一面コラム「春秋」には、次のようなことが書かれていました。
『洋酒会社で働いていた開高健が芥川賞を受けたのが1958年1月、27歳の時だ。
取材攻勢に加え、勤め先の社長も自宅に来て「大変な宣伝になる」ともち上げたらしい。
~ (中略) ~
開高はその後、ベトナム戦争の前線に赴いたり、
平和運動に取り組んだりと文壇の枠におさまらない活躍を続けた。
若者向け雑誌に人生相談を連載し、釣りを通じ世界の秘境もガイドしてくれた。
自ら芥川賞を選ぶ側になってからは「作品ではなく作文」「身辺雑記にすぎない」など
候補作を一刀両断する選評が目立った。
「批判精神で現実と切り結べ」と後進を励ましたのだろう。
今、ポピュリズムや分断の影が世界を覆う。
日本だって、いや応ない少子高齢化に身をすくませたままだ。
文学の鋭い洞察が新たな気づきにつながれば、泉下の開高も口元を緩めるか。
こんな弁もあり身が引き締まる。「作品には鮮烈な一言半句を求めるだけだ」』
う~む、なるほど‥‥。「鮮烈な一言半句( いちごんはんく)」ですか‥‥。
芥川賞作品よりも、新聞の一面コラムにこそ、これが求められるのかもしれません。
ところで、開高さんは、数多くの名言を残されました。
手元にある『開高健の名言』(谷沢永一著:KKロングセラーズ)を開くと、
『短文を書くのはむつかしい。
長文を書くのもむつかしいが、短文では別種の苦労で背中が痛む。
言葉を煮詰め、蒸留し、ムダをことごとく切って捨てながら
事の本質をつかまえて伝えなければならない。これが容易ではないのである。‥‥』
という名言がありました。
でも、私は何と言っても『漂えど沈まず』のワンフレーズが、
開高さんの名言のナンバーワンだと思っています。