「危機の指導者チャーチル」(冨田浩司著:新潮選書)を読了しました。
「国家の危機」に命運を託せるリーダーの条件とは何か?
現役外交官(北米局参事官)がチャーチルの波乱万丈の生涯を追いながら
リーダーシップの本質に迫った「危機の指導者論」です。
最終章の「指導者とは」で、著者は、
チャーチルから危機の指導者に求められる資質を学ぶとすれば、
特に次の三つの資質が大事だと述べられています。
①コミュニケーション能力
指導者が危機に際して最初に取り組むべき課題は、目的意識の明確化である。
②行動志向の実務主義
危機における指導者の最も重要な役割は、大きな戦略的判断を下すことである。
③歴史観
危機において歴史観を持つことは、前例を墨守することや変革を忌避することを意味しない。
それはむしろ、指導者が国家の存亡を左右する選択を迫られた時に、
国家のあり方と国民についてどれだけの理解を持ちながら決断を下すか、という問題である。
見落としがちですが、著者は政治制度についても重要な指摘をされています。
それは次の記述です。
『最も重要なことは、この国(英国)の制度は、権力の濫用に様々な歯止めを設けつつも、
結局は政治は人が行うということを
正面から受け止める仕組みを形作っているということである。』
『指導者を選ぶのは、国であり、政治であり、国民である。
チャーチルの一生は、この単純ではあるが、重要な真理を物語っている。』
議会制民主主義の母国、英国は法治主義の母国でもあるが、
本質的には「人治」主義の国であるとして、その懐の深さを著者は評価されています。
「翻って、日本という国家と国民はどうなのか?」、いろいろと考えてしまいます。
まだまだ私達日本国民は、英国とその国民のように
「危機の指導者を見極める識見や懐の深さ」がないのかもしれません。
- 作者: 冨田浩司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/09
- メディア: 単行本
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