「昭和史(下)」(中村隆英著:東洋経済新報社)を読了しました。
(上)・(下)を通じて印象に残っているのは、
私が生まれた年である1955年の次の記述です。
『〜(中略)〜 その混乱は1955年体制の成立によってほぼ決着がつけられた。
55年体制とは、保守党と社会党の統一、
1カ2分の1党体制の成立、新憲法の定着、
共産党の自己批判という政治的意味で用いられるのが普通であるが、
経済的にも労使関係の面でも、おそらく画期的な年であった。
経済的には、戦前の生産と生活の水準と様式が回復され、
新技術、新産業の展開がはじまろうとしていた。
労使関係の面では、翌56年から総評の春闘が開始されて、
政治主義から経済主義への脱皮がはかられ、
所得分配機構として定着していくことになった。
学問の面でも、このころから経済学や政治学の新しい考え方が広がっていき、
日本の現実を分析する手法として適用されるようになっていった。
戦前への復帰が達成されたこの時点が戦前との訣別であって、
新しいメカニズムが始動しはじめたのである。
1955年は、この意味で昭和史の最大の区切りになると筆者は考えている。』
「昭和史の最大の区切り」という年に生まれた私…。
この年以降、日本は高度成長の道をまっしぐらに進んでいきます。
吉川洋先生の「高度成長」の読後感想にも書きましたが、
「今日よりは明日」、「明日よりは明後日」には、必ず社会や個人の生活は豊かになるという
「夢と希望」があった時代を人生の前半に生きられたことは、
本当に幸せだったと思っています。
この「昭和史」は文句なしの大作であり、力作です。
この本が素晴らしいのは、特定の思想に染まることなく、
昭和史を、歴史という観点からだけでなく、
政治・経済、文化、思想といった幅広い観点から書かれていることです。
ところどころで触れられる「名言」や「エピソード」などは、
この本の中で見事な脇役を演じています。
高校では、「日本史」を選択される生徒さんも多いと思いますが、
この本を「副読本」として読まれてはいかがでしょうか?
きっと、近現代史を学ぶのが楽しくなると思いますよ……。
ところで、「平成」という時代は、どのように描かれるのでしょうか?
ほとんどが「失われた20年」の記述になるのでしょうか?
なんとか、「夢と希望」を次の世代に引き継ぎたいものです。
- 作者: 中村隆英
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 文庫
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