昨日(8日)、「岐路に立つ中国」(日本経済新聞出版社)などの著書がある
津上俊哉氏(有限会社「津上工作室」代表取締役)の講演を聴く機会がありました。
講演のテーマは、「転機の中国〜地方のチャンスは何処にあるか」でした。
講演は時宜を得たもので、次の三つがその主な話題でした。
1 中国経済の見通し
2 国民意識の変化と尖閣問題
3 政権交代の行方
それぞれ印象に残った内容を、この日記にメモしておきます。
まず、「中国経済の見通し」について
・内陸農村部からの労働力大量移動といった
過去20年間の成長を支えた要素は、その多くがピークアウトしている。
・年5%の巡航速度(潜在経済成長率?)を押し下げる3大問題がある。
短期的には、金融危機後の巨額投資の反動・後遺症が深刻
中期的には、生産性向上が必要な時期に「官」が肥大するあべこべ
長期的には、日本より更に急速に進行する少子高齢化
・中国が20年以内にGDPで米国を追い抜くことはない。
次に、「国民意識の変化と尖閣問題」について
・「世界一の大帝国」が「弱くてバカにされる後れた国」に転落したという
歴史トラウマ(被害者意識、劣等感)がある。
・対外的に弱腰だと、「売国奴」だと糾弾される不安、いわゆる「漢奸タブー」がある。
・外交政策は、訒小平の遺訓「目立つな、腰を低くせよ」から、
主権、領土・領海は「核心利益」であり、「絶対に譲歩しない」に転換している。
・尖閣事件で、歴史トラウマ、漢奸タブー、好戦論が爆発した。
・尖閣問題で最も怖いのは、
現場海域の不慮の事故で、陸地の抗議運動が制御不能に陥り、
在留邦人が危害を加えられること。
最後に、「政権交代の行方」については、
講演時間が残りわずかとなり、ごく簡単に説明されましたが、
習近平新政権に対する津上氏の私見として、
・習近平氏と胡・温(現トップ)は必ずしも対立していない。
・新執行部は、団結第一、安全運転で臨み、
経済改革面でも、思い切った舵取りはないのではないか?
予定していた講演時間の1時間30分が、あっという間に過ぎたほど、
とても面白くて有意義な内容でした。
本当に中国は、「理解しにくく、扱いにくいが、とても大切な隣人」という感想です。
- 作者: 津上俊哉
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
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