しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

言葉のニュアンスは難しい

昨日(25日)の日経新聞「経済教室〜経常黒字縮小が迫る政策㊤」は、
小峰隆夫法政大学教授の「成長戦略財政再建急げ」でした。

貿易収支が赤字になり、
日本もいよいよ経常収支が赤字に転落か?…といった場合に、
私も含め一般の人は、「家計の赤字」をイメージして、
これから日本も大変なことになるのでは?…と心配したりします。

小峰先生は、こうした「素朴な不安」に対して、次のように述べられています。
『多くの人は、経常収支の黒字が減少したり赤字化したりすることを
 「経済にとって悪いこと」だと認識しているようだ。
 マスコミでもしばしば貿易収支が赤字に「転落した」と表現される。
 これも「赤字よりも黒字の方が良いことだ」という意識があるからだろう。
 強調しておきたいのは、経常収支の姿そのものは
 それほど重要な経済政策上の目標とは考えられていないことだ。
 日本も含めて先進諸国は、成長率を持続可能な形で高め、物価を安定的な状態に保ち、
 失業率を低くすることについては重要な政策目標として位置づけている。
 しかし、経常収支を政策目標として位置づけている国は存在しない。』

そして、小峰先生は、
成長率が低かったり、デフレやインフレになったり、失業率が高まったりして、
国民の福祉(または生活水準の上昇)が損なわれることこそが問題で、
経常収支の黒字が減ったからといって
国民福祉が損なわれるとは限らないと説明されています。

なるほど、そういうことだったのですね。少し安心しました。
ところで、小峰先生は、
多くの人が「赤字よりも黒字が良い」という認識から逃れられない理由として、
「黒字」「赤字」という言葉のニュアンスがあると指摘されています。
確かに、誰でも家計の所得や企業収益を連想して「黒字が良い」と思いますよね。

さて、小峰先生の解説をここまで読んで、
地方自治体の財政分析指標についても同じようなことがいえることに気がつきました。
例えば、「○○年度決算における単年度収支が赤字に転じた」などの表現です。
これを聞くと、限りなくマイナスのイメージがありますが、
単年度収支は年度ごとの実質収支の相対的変動を示すもので、
前年度の単年度収支が黒字の場合には、過去の剰余金を使用したことを意味しており、
直ちに財政再生団体(ちょっと極端ですが…)に転落するものではありません。

かように、言葉のニュアンスというものは難しいものです。
それでも、上記の例で、「赤字」に代わる適切な言葉はなかなか見つかりません。
う〜ん、弱りましたね。適切な言葉は、ほかにないのかなぁ……?