しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「提示」から「説得」の政治へ

今、「日本に成長戦略は必要なのですか?」と問われれば、
アベノミクスの「三本の矢」の政策の一つで、もちろん必要でしょう!」と、
多くの人が答えると思います。実は私もそう思っていました。

ところが、
三菱UFJリサーチ&コンサルティング・鈴木明彦調査部長の
成長戦略は必要なのか〜成長戦略が経済成長率を高めるという幻想」
というレポートを読んで、
そうした認識を再考してみることも「大切な作業」であることに気づきました。

A4で17ページもある長文のレポートの中で、私の最も印象に残った記述は次の個所です。
少々長くなりますが、引用させていただきます。
『成長分野はお上から教えてもらうものではない。
 個々の企業や企業家が自分で見つけ出すものだ。
 政府の成長戦略で提示されていることは、
 多くの民間人がすでに知っている分野といってもよいだろう。
 当たり前のことだが、経済成長の担い手は民間セクターだ。
 公共投資や政府支出の拡大は経済成長率を高める要因であるが、それは一時的なものである。
 企業にしても個人にしても、民間の経済活動が活発になり、
 そこから得られる企業利益や個人所得の増加が源泉となって、
 設備投資や個人消費といったさらなる経済活動の拡大が続く。
 こうして持続的な付加価値の拡大が続くことが本来の経済成長だ。
 マスメディアの論調では、だからこそ政府による成長戦略の提示が重要だというものが多い。
 しかし、日銀による大胆な金融緩和と政府による成長戦略の提示によって
 仮にデフレを脱却したところで、それで日本経済の成長力が高まるわけではない。』

そして、レポートは、
『政府がやるべきことは、日本国内そして世界経済で起こっている構造変化に、
 わが国がどのように対応していくべきなのか、
 そのビジョンを示して、それを着実に実行していくことだ』と述べて、
 成長戦略にとどまらない国家戦略を考えるべきだと指摘しています。

『それは、すぐに成長に結びつくわけではなく、
 しかも痛みをともなう政策であり、それだけに反対する人がたくさんいて、
 何とか実現しても国民の人気は得られない地味な政策であるかもしれない。
 しかし、それが正しいと思うのであれば、
 国民を説得して実現していくことが政治の大事な役割だ。』

う〜ん、この文章には参りました。
円安や株高に浮かれていては、物事の本質を見失ってしまうのかもしれません。