今日(8日)の愛媛新聞には、
福島原発事故で、原子炉建屋の爆発直後に住民の救出や避難誘導に当たった
福島県警の警察官125人へのアンケート調査の結果が掲載されていました。
原発事故の現場で警察官が葛藤しながら活動した状況が、
まとまった形で明らかになるのは初めてだそうです。
調査結果によると、
「68%(85人)が死の恐怖を強く感じ、41%(52人)は任務の放棄も考えながら、
実際に現場を離れた人は一人もいなかった」としています。
また、アンケートの自由回答では、
「家族が分からず、探しに行きたかった」
「逃げたかったが、誰かがこの仕事をしなければならない」など、
苦悩した胸の内も明かされています。
この記事を読んで、
『重大事件に学ぶ「危機管理」』(佐々淳行著:文春文庫)のことが頭に浮かびました。
佐々さんはこの本の中で、
ウィリアム・ジェイムズの「宗教的経験の諸相」の次の一節を引用されています。
『何か大きな事件や事故が起きたとき、
人はみな「誰かがこれについて何かをしなければならないという。」
しかし自ら進んでその困難に当ろうとする者は、極めて少ない。
誰もが、誰かがこの仕事をすべきだと思うが、
「しかし、なぜ私が(Why Should I ?)」と自問自答する。
ところがひと握りの宗教的な人たちは、
誰かがこの仕事をしなければならないとすれば、
「なぜ、私がやらずにすむのだろうか(Why Should'nt I ?)」と自問自答する。
全人類の道徳的進化の過程は、このふたつの自問自答の間に横たわっている。』
おそらく、当時の警察官の方々は、この自問自答を繰り返されたのではと拝察します。
任務とはいえ、最後まで仕事をやり遂げられたその使命感に、頭が下がる思いです。
私が同じ立場にいたら、怖くて逃げだしていたかもしれません。
今回の調査を実施した小林良樹・慶応大教授は、
「日ごろから良好だった職場の人間関係が、
連帯感や使命感を生む土壌になった」と分析されています。
東日本大震災から、間もなく2年。
人と組織の「強さ」と「弱さ」、そして危機管理の重要性を
改めて考えさせてくれた、そんな記事でした。
- 作者: 佐々淳行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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