昨日の続きです。
今日は、「〈銀の匙〉の国語授業」(橋本 武著:岩波ジュニア新書)の読後感想文です。
進学校中の進学校である名門「灘校」で、
中学3年間をかけて、横道に入り込みながら、
「銀の匙」をゆっくり読む授業が行われていたことを知って、正直驚きました。
あまりに進度が遅いので、
生徒から「こんな進行では、一冊終わらないのではないか」と質問されたときの、
橋本先生の次の言葉が印象に残っています。
『スピードが大事なんじゃない。すぐに役立つものはすぐに役立たなくなる。』
この『すぐに役立つものはすぐに役立たなくなる。』という言葉は、
どこかで聞いたことがあるのですが、どうしても思いだすことができません。
ちょっとフラストレーションが溜まりそうですが、
それにしても奥行きのある言葉ですよね。
すぐに役に立つような、単なる受験テクニックだけを教えるのではない、
逆に言うと、一生涯にわたって役に立つような授業が行われてきたからこそ、
灘校から多くの有意な人材が輩出されてきたのだと思います
そのことが理解できる橋本先生の言葉を、著書から拾ってみました。
・勉強は大学入試のためだけにあるのではありません。
長い人生を生きていくための基礎力をつけるためにあるのです。
とくに国語はそうなのです。
国語はすべての教科の基本であり、学ぶ力の背骨といっていいでしょう。
・国語の勉強は生涯ついて回るものです。
人間の国語勉強は誕生と共にはじまっています。
勉強の最初の場は家庭であり、家庭での国語勉強の手がかりは、
生涯に大きな影響を与えるものと言わなければなりません。
・自己表現の手段としての「書くこと」、
それは私たちの生活の重要な一面を受け持っています。
その能力を啓発しておくことは、これからの長い一生に、
どれ程大きなプラスになるか、はかり知れないものがあるでしょう。
その練習方法は、①読後感を書くこと、②日記をつけること、③詩や歌を作ること
・私が言っていたのは、
「受験が目的の勉強ではなく、
この勉強をしていれば結果的に受験に有利になる」ということでした。
だいたい大学への進学は人生の目的ではなく、ひとつの手段なのですから。
橋本先生は、自筆の「あとがき」で、
「この本は、年配の方々にも読んでいただきたいと思っています」と書かれています。
確かにこの本は、改めて「学ぶこと」の原点に気づかされる一冊でした。
あぁ…(溜息)、もっと国語を真剣に勉強しておけばよかった…(反省)。
- 作者: 橋本武
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/03/23
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