しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

肝に銘じる

今日の日記は、いささか専門的になります。

昨日(16日)の日経新聞「経済教室」で、
東京大学の山本清教授が、「自治体会計の制度統一を」という論考を発表されていました。

公会計制度の整備について、全市を対象にアンケート調査を実施したところ、
資産や負債のストック情報を含む決算を、
予算編成や行政コスト評価に活用していない自治体が多いことが明らかになりました。
山本教授は、こうした事態の背景や理由を、次のとおり整理されています。

第一は、財務書類の作成方式が抱える課題。
財務書類の作成方式には、改訂モデルや基準モデルのほか、
国際公会計基準に近いモデルを使用している自治体もあり、全国統一の基準がない。

第二は、現実の地方財政が現金主義で管理されていること。
企業会計に準じた発生主義の財務情報が正確なコストを算定できるとしても、
予算編成や地方債発行、決算など財政の管理が現金主義によるため、
実務的な関心は現金主義情報に向かい、財務書類の情報が重視されにくい。

第三は、費用対効果の問題。
現金主義の制度に加えて発生主義の会計制度を運用するには
システム整備以外にデータ管理や決算書類作成の費用がかかる。
発生主義の情報を活用すれば効果が得られる可能性もあるが、
効果が乏しいあるいは不確実な時は費用をなるべく削減しようという行動になる。

こうした事態を打開するために、
山本教授は、次の3点の解決策を提示されています。
第一に、財務書類の基準を統一すること。
第二に、財務書類の制度的な位置づけを明確にすること。
第三に、自治体財政を現金主義を中心とする管理から、
発生主義を原則とする制度へ移行し、費用対効果を高めること。

なんだか、仕事の延長線のようなメモになってしまいました。
ちなみに、私の所属する自治体では、
平成20年度決算分から「総務省方式改訂モデル」を用いて、
バランスシート、行政コスト計算書などの財務諸表を作成していますが、
他のモデルで作成した自治体(自治体の中では少数派ですが…)との比較はできません。

また、財政健全化法に基づく財務指標が、
現金主義の決算統計に基づき算定されることも
活用のインセンティブが働かない要因だと思います。
(発生主義の財務諸表を作っても、有効に活用される機会が少ないのです。)

正直なところ、財政当局は一年間を通して大変多忙で、
あれやこれやの財務諸表を作成するだけで手一杯なのが実態ではないでしょうか?

山本教授、御指摘のとおり、
現金主義と発生主義の二元管理を一元化し、作業負荷を減らすことが、
まずは必要なのかもしれません。

そういえば、このことに関連して、
『会計情報は、「理解可能性」、「信頼性」、「目的適合性」、「適宜性」、
 「首尾一貫性」、「比較可能性」の6つを備えていなければ問題がある。』
ということを聞いたことがあります。

また、山本教授の論考が日経新聞に掲載された同じ16日には、
政府の「経済財政諮問会議」が開催されましたが、
有識者議員から提出された「地方財政の改革に向けて」という資料の中には、
企業会計原則による公会計は、経営改革を進め上での基礎インフラである。
 各地方自治体におけるその導入を加速し、
 自治体財政の更なる“見える化”を進めることが重要。』
という文言がありました。
こちらは、大量更新期を迎えるインフラの維持・管理には、
ストックを含めた財務情報の透明化が不可欠であることを指摘しています。

どちらの御指摘も、地方自治体職員として肝に銘じておきたいと思います。