今日(22日)の産経新聞「正論」は、
大田弘子・政策研究大学院大学教授の「規制改革阻む株式会社への偏見」でした。
御案内のとおり、大田教授は、
現在、内閣府の規制会改革会議の議長代理を務められています。
その太田教授が今回の論評の中で、次のような感想を述べられています。
『規制改革の議論をしていて、かねがね不思議に思うことがある。
それは、「株式会社は儲(もう)け主義。だから質が低い」という株式会社への不信感だ。』
代表的な事例として、大田教授は、
株式会社による認可保育所の経営と株式会社による農地所有の制限を挙げられています。
そして、株式会社の不信感は、
そもそも実際のパフォーマンスを国民や利用者が比較できない点に
原因があるのではないかと指摘されています。
さらに、サービスの「質」が生命や健康にかかわる医療・介護・保育の分野で、
経営形態など外形的な基準で担い手を限定することは、
質の管理は容易になるけれども、この方法は、次の3つの問題点を生むと述べられています。
①行政の怠慢の問題
入口の規制で事足れりとすることで、実際の質のチェックがおざなりになっている。
②経営側の競争の欠如の問題
社会福祉法人も株式会社もNPO法人も、利用者のニーズに応えようとすることで、
サービスの質が高まり、多様性が生まれる。
「株式会社は儲け主義」と批判的に言われるが、
市場競争があれば、利用者に選択されない限り利益をあげることはできない。
③イノベーションの欠如の問題
参入障壁によって、新しい発想やノウハウをもった事業者が入ってこないし、
たとえ業界内に創意工夫に満ちた事業者がいても、
規制に縛られて革新を起こす余地は狭められる。
論評の最後は 次のとおり強い口調の文章で締めくくられています。
『規制改革会議に対し、
「質を軽視している」というネガティブキャンペーンを張られることがあるが、
声を大にして反論したい。
質が大事だからこそ、入り口で外形的に参入を制限して事足れりとするのではなく、
事後的に質を監視し、評価する体制を強化し、
利用者の選択眼が機能する市場をつくることが必要なのである。
事業者の側に立った競争相手の排除ではなく、
利用者の側に立った質の管理こそが求められている』
う〜ん、なるほど。
「事前規制」から「事後監視」は、新自由主義的な考え方だと思うのですが、
太田教授の御指摘は、納得できるところがあります。
でも、そうは言ってもやっぱり、
株式会社は、経営が悪化すると
本能的に事業から撤退するのではないかという懸念を消すことができません。
社会に貢献できる株式会社でなければ、
今の御時世、世間から評価されず、生き残れないことは
重々分かっているつもりなのですが…。