しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

悠久の中のひととき

通勤電車の中で読み進めていた「銃・病原菌・鉄㊤㊦」
(ジャレッド・ダイアモンド著:草思社文庫)を読み終えました。

『あなたがた白人は、
 たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、
 ニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。
 それはなぜだろうか?』
本書は、「ヤリ」という名の、ニューギニアの優れた政治家の問いかけに
答えようとすることから始まります。

「各大陸ごとの差異が生じて、やがてその格差が大きく広がったのは何故か。」
人類史におけるこの疑問の中でも、
「なぜ中国ではなくヨーロッパが主導権を握ったのか。」
という疑問に対する分析が、私にはとても興味深かったです。

その答えが、「中国の長期にわたる統一とヨーロッパにわたる不統一」
だという著者の指摘には、目からうろこが落ちました。
それはどういうことかというと、
『中国では、地域の地理的結びつきが強かったことがかえって逆に作用し、
 一人の支配者の決定が全国の技術革新の流れを
 再三再四止めてしまうようなことが起こった。
 これとは逆に、分裂状態にあったヨーロッパでは、
 何十、何百といった小国家が誕生し、それぞれに独自の技術を競い合った。』

本書は、上下それぞれ約400ページにわたる大作で、
同じような記述が、何回も繰り返し登場しますが、
全然くどくなく、その都度復習できるような感じです。
むしろ、1万3000年にわたる人類史の謎を、
約800ページに要約できることの方が神業なのかもしれません。

本書を読むと、
些細なことで落ち込んだり、どうでもいいことで悩んだりすることが、
なんだか馬鹿らしく、自分がすごくちっぽけな存在に思えてきます。
そして、「悠久の中のひととき」を生かされているという感覚になります。
それほど、スケールが大きいというか、気宇壮大な本だと思います。