先般、この日記で、
雪斎先生こと、櫻田淳・東洋学園大学教授の論評の感想を書いたところですが、
今日の産経新聞「正論」では、
長谷川三千子・埼玉大学名誉教授が、雪斎先生の論評を受けて、
『戦後処理の「知的欺瞞」をはぎ取れ』という論評を投稿されていました。
長谷川教授は、
雪斎先生の『平成版「富国強兵」路線』に大いに賛同しつつも、
「それがいかに途方もなく難しいものであるか」ということを、
軍事面や経済面などの例を挙げて説いておられます。
では、私たちは未来永劫「賊軍」の汚名を背負ったまま生きなければならないのか?
こうした疑問に対して、長谷川教授は、
私たちを窮地に追い込んでいる、その考え方の枠組み自体を明るみに出し、
検分することが有効であると述べられています。
長谷川教授の説明によると、
今、わが国を悩ませている〈敗戦国イコール戦争犯罪国〉という図式は、
昔ながらの(ある意味では健全な常識とも言える)「勝てば官軍」とは次元の異なるもので、
この図式は、今から百年足らず前、
第一次大戦の戦後処理において初めて登場してきたものだそうです。
具体的には、
第一次大戦の戦勝国である英仏両国は、歴史上にも例(ため)しのない、
自軍の戦費一切を支払わせる「全額賠償」を要求したけれども、
その根拠として、敗戦国ドイツの侵略がこの戦争の原因だ、
戦争責任はすべてドイツにあるのだと主張し、
これがベルサイユ条約のいわゆる「戦争責任条項」(ウォー・ギルト・クローズ)として
確定されたと解説されています。
そして、この不公正な図式が、
第二次世界大戦の戦後処理において、もう一度繰り返されたとは、
人類史上の汚点であるばかりでなく、
21世紀が引きずってはならぬ前世紀の遺物システムだというのが重要な点で、
世界全体に根本的な知的欺瞞を強いるものだと、強い口調で糾弾されています。
そして、論評の最後に長谷川教授は、
『〈歴史認識合戦〉をする前にやるべきことは、
世界の知的欺瞞のベールをはぎ取ることでしょう。』とのべられています。
う〜ん、弱りました。じゃあ、その「知的欺瞞のベール」をはぎ取るために、
私たち日本人は、これから具体的に何をすればよいのでしょう?
そもそも、「知的欺瞞」って一体何?その意味するところがよく分かりません。
(「戦争責任条項」=「知的欺瞞」?)
長谷川教授の御見解も、
「それがいかに途方もなく難しいものであるか」、と私には思われます。
読んだ後、ちょっと欲求不満が残る論評でした。
次回の「正論」で、さらに詳しく御教示いただければ嬉しいです。