今月12日(水)の日経新聞「経済教室」は、「成長戦略を問う−女性活用㊦」、
川口章・同志社大学教授の「日本的雇用慣行に修正を」でした。
いつものように、論考の概要を、この日記に残しておきたいと思います。
川口教授は、日本の大企業で女性が活躍しにくいのは、
いわゆる日本的雇用慣行と無関係ではないとして、
「管理職に占める女性の割合」といった統計指標を用いて、
日本的雇用慣行が強い企業ほど女性の活躍が難しいことを指摘されています。
話が前後しますが、
大企業で特徴的な日本的雇用慣行とは、
終身雇用制、年功賃金制、企業内人材育成、内部昇進制、企業内労働組合などをいいます。
この日本的雇用慣行の下で女性が活躍しにくいのはなぜか。
川口教授は、仮説として、次のようなことが考えられると説明されています。
第1に、そのような企業は、離職せずに長期間働く人材を求める。
→ 企業は、残業、転勤など、仕事と家庭の両立が難しい労働条件の下でも
長期勤続が期待できる男性を優先して採用する。
第2に、日本的雇用慣行の下では、新卒採用が基本で中途採用は少ない。
→ 女性は、子育てや介護など、家庭の事情で離職することが多いが、
終身雇用を基本に人材育成している企業では、
一度キャリアを中断した女性を正社員として採用することはほとんどない。
第3に、終身雇用制度のもとでは、勤続年数の長い男性従業員が多いため、
年功序列と性役割に根ざした企業風土が残っていることが多い。
→ たとえば、営業職のように外部との交渉の機会の多い職種には、
女性を配置しない企業も少なくない。
では、日本企業が女性の活躍を推進するためには何が必要なのか。
川口教授は、企業内教育訓練と定期的人事異動を組み合わせた長期的人材育成は、
日本企業の競争力の源泉であるとして、
そのような仕組の中で女性の活躍に道を開くためには、
仕事と家庭の両立支援が不可欠であると述べられています。
そして最後に、政府が企業に対し、
女性活躍や両立支援策についての情報公開を義務付けることを提言されています。
私は、この論考を読んで、
次の記述こそが、川口教授が本当に訴えたかったことではないかと思っています。
「企業の競争力強化のためには、育児や介護を経験した女性はもちろんのこと、
異業種で就業経験を持つ人、社会人から大学へ再び戻って勉強した人、
長期留学経験者など、多様な人材が活躍しやすい職場環境と雇用制度を整えること。」
これって、今風に言うと、「ダイバーシティ・マネジメント」?
いずれにしても、「日本的雇用慣行」を修正するためには、
日本企業の「度量」や「力量」が試されているような気がします。