規制改革が、なぜ政府の成長戦略の「一丁目一番地」なのか。
昨日(19日)の日経新聞「経済教室」で、八田達夫・大阪大学招聘教授が、
『成長戦略の評価㊤〜特区で「岩盤」規制打破を』の題で解説されていました。
その答えは、ズバリ、論考中の次の箇所だと思います。
『経済成長がある程度進んだ段階では、
既得権を持つ成熟産業は新産業の成長を止めようとする。
そのために既得権集団は、
様々な口実をつくり、政治家を使って、参入規制を法制化する。
参入規制は、新陳代謝を阻害し、成長を止める最大の要因である。
だからこそ、参入規制の撤廃が成長戦略の一丁目一番地なのである。』
そして、八田教授は、
株式会社による農地所有が許されていないことや、
大都市の病床数が制限されていることを例に挙げて、
これらの参入規制は「岩盤」と呼ばれ、
岩盤はマグマのように強い力を持った制度が生み出していると指摘されます。
その第1は、国家公務員制度で、
第2は、労働の流動性を極端に下げている日本の雇用法制。
これら二つの制度の問題点をここで書くのは省略するとして、
成長戦略が成功するか否かは、
岩盤と言われる参入規制と、それを生み出しているマグマを
どれだけ勇敢に政治的コストを払って打破するかにかかっているとして、
そのための作戦計画を、八田教授は3つ挙げられています。
第1は、景気対策に即効性のある内需促進型の規制改革を行うこと。
→ 都心のマンションの容積率の大幅な緩和など。
第2は、競争を強化するほど、高所得者から低所得者への再配分を強化すること。
→ 相続税率の大幅な引き上げなど。
第3は、提唱された国家戦略特区を活用すること。
→ 公立学校の運営の民営化を特区において可能とするなど。
そもそも成長戦略には、
①特定の産業を政府が選んで成長のために補助金をつける方策と
②経済全体の新陳代謝を良くするための規制改革があるけれども、
安倍首相がこのうち規制改革を成長戦略の理念として選択した意義は極めて大きいと
八田教授は、論考の冒頭に述べられています。
私も同感です。
過去、政府や省庁が音頭を取って、
特定の産業が成長した成功事例は、ほとんどないのではないでしょうか。
経済成長は、民間セクタがその主役であるべきだと思います。
ただ、私も地方公務員なので、
国家公務員が省益を守る動機は、なんとなく理解できる気がします。