しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

安全保障を考える

「戦前日本の安全保障」(川田 稔著:講談社現代新書)を読了しました。

著者の本を読んだのは、
「昭和陸軍の軌跡〜永田鉄山の構想とその分岐」(中公新書)以来で、
これで二冊目となります。

この本は、山県有朋原敬浜口雄幸永田鉄山という
両大戦間期日本を代表する4人の政治家・軍人をとりあげ、
それぞれの安全保障構想を比較検討したものです。

本の「むすびに」を読むと、
4人の世界戦略がどのようなものであったか、アウトラインを知ることができます。

・山県の国際秩序認識は、
 力の論理が支配するパワー・ポリティクスの貫徹する世界であり、
 そのような認識を背景とする安全保障構想は、
 日露同盟による東アジアでの新たな勢力均衡の創出によるものであった。

・原の国際秩序認識は、山県とほぼ同様であったが、
 彼の安全保障構想は、山県と異なり、
 必要最小限の戦力の保持と共に、
 国際的に大きな影響力をもつ米英とりわけアメリカとの提携を考慮に入れたものだった。

・浜口の構想は、この原の構想を継承し発展させようとしたもので、
 軍縮下での戦力と対米英協調、
 さらには国際連盟による集団的安全保障を基本に、
 新たな安全保障システムを構築しようとした。

・永田は、国際連盟の実効性については疑問をもっており、
 国際社会をあくまでもパワー・ポリティクスの貫徹する世界としてとらえていた。
 したがって、連盟によって戦争を阻止することができず、
 列強間の戦争はこれまでのように不可避的なものであり、
 それゆえ次期対戦も、避けることはできないと判断していた。

そして、著者は、
山県の構想は帝政ロシアの消失によって崩壊、
原から浜口へと受け継がれた構想も満洲事変と政党政治の終焉によって挫折、
永田の構想もその死とともに陸軍内で分岐し、その陸軍も敗戦によって解体、
というように、いずれも結果的に失敗に終わったと総括しています。

さて、現在の日本はどうでしょう?
経済や軍事力の強大化を背景に海洋進出攻勢をかけてくる中国にどう対応するか、
尖閣問題など緊迫した東アジア情勢のなか、日米同盟をどのようにしていくのか、
避けては通れない安全保障上の課題が山積しています。

世界の中の日本の立ち位置はどうあるべきか、
普段から考えておくことの大切さを教えてくれる本だと思います。

戦前日本の安全保障 (講談社現代新書)

戦前日本の安全保障 (講談社現代新書)