今月15日の日経新聞「経済教室」は、
野中郁次郎・一橋大学名誉教授の
『日本経済の羅針盤㊦〜「知的機動力」生かす経営を』でした。
まず、野中教授は、日本企業の現状について、次のように述べられます。
『日本企業の現状を見ると、2000年ごろから多くの大企業が
「選択と集中」「成果主義」「株主価値の最大化」などの経営手法を採用した。
一方、社員を育成する余裕が失われ、
強みだった社員の忠誠心や団結力、社会貢献への思いなどは劣化した。
株主資本主義を意識せざるを得なくなり、
企業の目的は何かという価値観に基づいた経営判断ではなく、
数値で計測できる指標を用いて意思決定する風潮が広がった。
その結果、企業は理論分析過多、経営計画過多、
コンプライアンス(法令順守)過多に陥ったのである。』
日本企業の現状分析を踏まえて、野中教授は次の3点を指摘されています。
①経営とは本来、
クラフト(経験)、アート(芸術)、サイエンス(分析)の3つを総合したもので、
必要なのはバランス感覚のある献身的な人材だ。
人間の主観や価値観こそが重要だという考え方であり、
日本企業は改めてこの点を認識すべきではないか。
②日本企業のDNAは個々人の未来創造への強い思いと、
潜在能力の洞察に基づく人材育成と登用にあると、我々は再認識すべきだ。
③今、日本企業に求められているのは、構想力に裏打ちされた判断と行動、
そして、それができる強い思いを持った人材の育成である。
私の勝手な解釈ですが、
野中教授は、人材育成とその登用が重要であることを強調されているのだと思います。
では、人材をどう育成すればよいのか?
野中教授は、次のように述べられます。
『重要なのは経営学修士号(MBA)プログラムが軽視しがちだった
リベラルアーツ(教養)である。
「人間とは何か」から始まり、
真・善・美とは何かを考える中で「関係性を読む」能力を高める。
関係性のパターン認識は教養が豊かでないとできない。』
順序が逆になりましたが、
では、どのような人材を育成すべきなのか?
野中教授は、「実践知のリーダー」(歴史的構想力を持つ者?)という呼び方をされています。
その共通する能力とは次のようなものです。
①善い目的をつくる能力②場をタイムリーにつくる能力③ありのままの現実を直観する能力
④直観の本質を物語る能力⑤物語を実現する政治力⑥実践知を組織化する能力
そして、実践知のリーダーは、
事実と価値、客観と主観、理性と感情、分析と総合を繰り返し止揚しながら、判断し行動する、
日本企業には、こうした能力を持つリーダーが組織に広く自律分散して存在し、
重層的な相似形構造を持つフラクタルな組織が必要となる、と述べられています。
以上、私なりに野中教授の論考を整理してみました。
今は、分かったような、分かっていないような、正直そんな感じです。
でも、「実践知のリーダー」が盛り沢山の企業って、一体どんな企業なのでしょう?
「向かうところ敵なし」なのでしょうか?
ちょっと怖い気もします。