しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

ノスタルジーの世界

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹著:文藝春秋)を読了しました。

この本も、名言・名句のオン・パレードでした。
お気に入りを拾い出しただけでも、こんなにたくさんあります。

 ・限定された目的は人生を簡潔にする。
 ・思考とは髭のようなものだ。成長するまでは生えてこない。
 ・自由を奪われた人間は必ず誰かを憎むようになる。
 ・独創力とは思慮深い模倣以外のなにものでもない。
 ・どんなに穏やかに整合的に見える人生にも、どこかで必ず大きな破たんの時期がある。
 ・本当に深く心が傷ついたときには、言葉なんて出てこない。
 ・記憶を隠すことはできても、歴史を変えることはできない。
 ・人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。
 ・僕らはそれぞれ力を尽くして、それぞれの人生を生き延びてきた。
 ・生きている限り個性は誰にでもある。
  それが表から見えやすい人と、見えにくい人がいるだけだ。
 ・私たちはこうして生き残ったんだよ。私も君も。
  そして生き残った人間には、生き残った人間が果たさなくちゃならない責務がある。
  それはね、できるだけこのまましっかりここに生き残り続けることだよ。
  たとえいろんなことが不完全にしかできないとしても。
 ・自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当には誰にもわかりはしない。
 ・駅がなければ、電車はそこに停まれない。そして大事な人を迎えることもできない。
 ・正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる。
 ・失われてしまったいくつもの可能性と、もう戻ってくることのない時間。
 ・人生は長く、時として過酷なものだ。
 ・僕らはあのころ何かを強く信じていたし、何かを強く信じることのできる自分を持っていた。

個人的には、「1Q84」よりも、この物語の方が面白かったです。
高校を卒業してから40年。
同級生の何人かは、もう既にこの世には存在していません。
わたしにとっては、この本は、まるで「ノスタルジーの世界」です。
物語にでてくる会話を自分自身に置き換えて読んでみると、
なんだか切ない気持になりました。
ですから、上述の名言・名句の一つ一つが、胸に迫ってきます。
とりわけ、「つくる」と「エリ」の会話の中の
「僕らはそれぞれ力を尽くして、それぞれの人生を生き延びてきた。」の箇所では、
昔のことを思い出して、そこから次になかなか進めませんでした。

人によって、いろいろな受け止め方ができるので、
評価もそれぞれ違う結果になるような気がします。
……が、私は、一読の価値がある本だと思います。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年