しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

国語辞典の魅力

新解さんの読み方」(夏石鈴子著:角川文庫)を読了しました。

読売新聞「本よみうり堂」の書評を読んで、
「辞書を編む」(飯間浩明著:光文社新書)を読み、
次に「舟を編む」(三浦しをん著:光文社)、その次にこの本にたどり着きました。

最初の二冊は、国語辞典を編纂する人の立場から、
そしてこの本は、
新解さん」をこよなく愛する人の立場から書かれています。

考えてみれば、「国語辞典」は不思議な存在です。
私も「新解さん」(本名は三省堂の「新明解国語辞典」)を持っています。
ところが、余程の用事がない限り、その「本」を開けることがありません。

国語辞典を引かなくていいほどの知識があるわけではなく、
国語辞典に「手を伸ばす」という意識と意欲に欠けているのです。
そのため、私が持っている「新解さん」(五版)は、手垢がほとんどついていません。

しかし、この本を読んで、国語辞典に対する認識を改めることにします。
新解さん」の語釈や用例には、「主張」や「主義」があり、
時代の流れとともに変わるものと、決して変わらないものがあることを知ったからです。

変わらないものの一例が、【んとす】の用例です。
『われら一同、現代語辞典の規範たらんとする抱負を以て、本書を編したり。
 乞ふ読者、微哀を汲み取られんことを』

著者によると、
このメッセージは初版から五版までずっと変わっていなくて、
家宝のように伝わるメッセージだそうです。(七版でも変わっていません。)
う〜ん、まいったな……。(感動的やな〜)
国語辞典の編纂に懸ける真摯な思いが読者に伝わってきます。

この本の中には、
「御神体」と書かれた、著者所有のものと思われる
初版から五版までの「新解さん」の写真が掲載されていました。

ちなみに、私の書棚には、「新解さん」(五版)のほかに、
岩波書店の「広辞苑」(二版)と「国語辞典」(二版と三版)が静かに眠っています。
もう少しで処分するところでした。
これからは尊敬の念を以て、時々「拝む」ように心掛けたいと思います。

新解さんの読み方 (角川文庫)

新解さんの読み方 (角川文庫)

新明解国語辞典 第七版

新明解国語辞典 第七版