『日本人の叡智』(磯田道史著:新潮新書)を読了しました。
著者の出版の動機ともいうべき一節が、
本の「はじめに」で次のように書かれていました。
『人は、必ず死ぬ。しかし、言葉を遺すことはできる。
どんなに無名であってもどんなに不遇であっても、
人間が物事を真摯に思索し、それを言葉に遺してさえいれば、
それは後世の人々に伝わって、それが叡智となる。
この叡智のつみかさなりが、その国に生きる人々の心を潤していくのではないか。』
この言葉のとおり、この本では、
98人の先人の「叡智の言葉」が惜しみなく紹介されています。
読み終わった後は付箋だらけになるほど素晴らしい名言が多かったのですが、
私はむしろ、著者の解説の文章にいたく感動しました。
とても一日では書ききれそうにもありませんので、
私のお気に入りの名言とその解説のいくつかを、この日記に書き残しておきます。
まずは、中根東里の「出る月を待つべし。散る花を追うことなかれ。」
・この言葉は人生のすべてにあてはまる。
人生において歓喜の瞬間は短い。大切な人との別れもくる。
しかし、桜は散っても、月は必ず出てくる。
それを待つ時間をどのように大切に生きるか。
母を失った幼女を抱きしめ、この清貧の儒学者は、そのことを言い聞かせようとした。
次に、橋本雅邦の
「疑問があるならば、如何なる事でも説明を求めなさい。
だが求めない方(かた)には全くの説明の仕様がない。」
・「三十にして立たず四十にして惑(まど)ふと雖(いえど)も、
猶且(なおかつ)、孜々(しし)としてた撓(たゆ)まざれば遂には大成の域に達す」。
父の生涯でこれを目の当たりにしたと子の橋本秀邦が語っている。
学ぶとは自ら求める気魄ということであろうか。
このような感じなのですが、
そのほとんどは、私の知らない人物で占められていました。
著者が述べられているように、
「この国には、まさに砂漠の砂、天空の星のごとく、
きらきら光るたくさんの人物がいた。」、そのことにただただ感激した次第です。
「人間としてこの限られた人生をどう生きればよいのか」
著者もいまだその答えが見つからないそうですが、
その「謙虚さ」も、この本の価値を高めていると思います。
- 作者: 磯田道史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/04
- メディア: 単行本
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