今月29日の日経新聞「経済教室」は、
田中秀明・明治大学教授の「財政再建への具体策㊤〜内閣主導で総額管理を」でした。
田中教授は、この論考で、
予算と政治制度の両方の改革によって
財政再建に成功したオーストラリアの事例を紹介し、
日本の統治機構の問題と財政再建の方策を述べられています。
その問題点とは、次の3点です。
① 日本の統治機構の問題点について
・日本で財政再建を阻む根源的な問題は
「与党・官僚内閣制」ともいうべき統治機構にある。
これは、政府・与党二元体制を前提とする族議員(政調)と
各省官僚が連携する政策過程である。
本来なら政策立案や調整の中心となるべき内閣が相対的に弱く、
与党議員と官僚が連携して予算極大化を図る利益共同体となっている。
② 予算制度の問題点について
・政府部門には財政赤字を拡大させるバイアスが内在しているため、
政治家に財政再建ルールを守らせるための仕組みが必要である。
それはルール違反の政治的コストを高めることであり、
例えば、複数年にわたる中期財政フレームで予測と結果を検証し、
その乖離(かいり)を明らかにすることだ。
安倍晋三政権は消費増税対策として5兆円超の経済対策を決定したが、
これで財政再建がどうなるかを検証しなければならない。
③ 統治機構の観点からみた公務員制度の問題点について
・日本の公務員は制度の建前は中立だが、実際には政治化している。
政治化とは、与野党の国会議員との濃密な接触から政治的に強い影響を受けること、
公務員や省庁が自らの利害を追求することである。
一旦省庁に配属されれば、その省庁の入省年次別の背番号が一生ついて回る。
入省当初は天下国家を論じていても、次第に省庁の利害を守るようになり、
政策の立案実施もゆがめられていく。
公務員の政治化は裏返せば専門性の劣化である。
現在の霞が関の公務員は、調整業務や政治家対策に追われ、
データに基づく問題の分析や選択肢の検討などをする暇がないのが実態である。
なかでも政治化しているのが財務省で、ゆえに財政の透明性が低い。
う〜ん、田中教授の御指摘を、簡単に要約して書こうと思いましが、
いずれの問題点も重要なことを書かれているので、
途中でその作業をあきらめて、そのまま原文を引用させていただきました。
そして、以上3点の問題点を踏まえたうえで、田中教授は、
『財政再建が最終目標ではない。当面の日本の課題は少子高齢化を乗り越えることだ。
分配型政治システムを改革するための予算制度と統治機構の改革が求められている。』
と論考を締めくくられています。
分配型政治システムを負担型政治システムに改革するのは容易ではないと思われますが、
田中教授は、次のような「名言」をこの論考に残されています。
『財政再建とは政治改革である。』
「財政再建こそ政治主導で行われるべき。」ということでしょうかね?
追記
今、田中教授も執筆者の一人である
「民主党政権 失敗の検証〜日本政治は何を活かすか」(中公新書)を読み進めています。
第二章まで読み終えましたが、とても面白い本です。
いずれ読後感想文をこの日記で書きたいと思います。

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)
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