しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「失敗」を今後に活かすために

民主党政権 失敗の検証〜日本政治は何を活かすのか』
(中公新書:日本再建イニシャティブ)を読了しました。

とても内容の濃い本で、読み終えたあとは、付箋だらけになっていました。
その中でも、特に印象に残った箇所を抜き出してみました。

 ・民主党政権の失敗の理由には、首相をはじめとする人の問題、
  制度の問題、経済環境などが複雑に絡んでおり、単純化は慎むべきだが、
  彼らの言う「政治主導」には、
  自分たちでなんでもできるという過信・驕り・想い上がりがあったのではないか。

 ・政権獲得後の民主党は、政策やマニュフェストの基本理念にこだわれば
  確固たる支持基盤が確立されず、
  かといって利益団体に接近すれば基本理念を失うという矛盾に悩まされた。

 ・民主党政権が抱えたさまざま矛盾は、
  近年の日本政治が直面する普遍的な課題でもある。
  そもそも1990年代からの自民党は、
  バブル崩壊後の財政赤字の膨張と都市有権者の離反に悩まされてきた。
  その解決策である小泉政権構造改革は、
  改革派と「抵抗勢力」による党内対立を激化させ、
  小泉チルドレンのように大量の新人議員を生む一方で、
  旧来の支持基盤を弱体化させた。
  明確な対立軸が民主党自民党の間にあるのではなく、
  それぞれの党が深刻な党内対立を抱えてきたのである。

う〜ん、このように抜き出してみると、
この本は、「民主党政権の失敗」というより
「日本政治の失敗」を検証しているようにも思われます。

民主党には手厳しい指摘が盛りだくさんでしたが、
第5章の「子ども手当〜チルドレンファーストの蹉跌」では、
次のような「肯定的な」の記述もありました。

 ・右肩上がりの経済に支えられ、
  国家が「成長のパイ」を配分できた時代はすでに終わった。
  少子高齢化社会の今、働き手が減り、
  年金や医療、介護を必要とする高齢者が急増している。
  支える側の現役世代も、かつてのような完全雇用による生活保障は望めない。
  非正規雇用の増大、世帯所得の低迷、若者の失業率の上昇を背景に、
  家族の努力だけでは解決しがたい問題が山積している。
  その解決策を個人の責任とするのか、
  それとも社会全体で分かち合う課題とするのか。
  どの層へ負担を重くし、どこに重点的に資源を配分すべきか。
  これらの課題に対し、民主党は次世代への資源配分を大胆に組み込み、
  社会が連帯して子どもの成長を支援しようと提言した。
  子どもを育てることが女性や若い世代にとって
  経済的、社会的にペナルティーにならない、一つのビジョンを示したのである。

この本が素晴らしいのは、
各章の終わりに掲載されている「参考文献」が充実していることと、
巻末に「民主党政権 関連年表」が分かりやすく掲載されていることです。

読んだ後に充実感が味わえる、レベルの高い本であることは間違いありません。
政治を志す人をはじめ、多くの人に手にとってほしい本です。

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)

民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)