しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

未来志向の保守主義

『保守とは何だろうか』(中野剛志著:NHK出版新書)を読了しました。

この本では、
19世紀イギリスの天才的な保守主義者・コールリッジに光を当てて、
マクロ経済学に関する先見性など、その卓越した思想を紹介しています。

コールリッジの経済社会論の特徴、すなわち保守主義の特徴について、
次の3点に簡単に整理したページがありました。

 第一に、全体を俯瞰するマクロ的な視座に立って、
 その文脈の中で、個別の現象を総合的に解釈する。

 第二に、原理原則にとらわれずに、具体的な解釈を柔軟に見いだしていく。
 ただし、そのプラグマティックな政策提言は、決して場当たり的なものではなく、
 全体についての構図の中に総合的に位置づけられている。

 第三に、人間を社会的・道徳的存在とみなし、
 経済活動も、非経済的・社会的動機によっても行われうるものと考える。
 そのため、経済現象の解釈においても、
 精神的・道徳的な要因を排除せず、むしろ精神の問題を経済問題の根本に据える。

こうしたコールリッジの経済社会論に顕著な特徴は、
ある一貫した哲学的基礎を持っているとして、
著者は、第4章の『科学〜保守が描いた「知の方法論」』で
詳しく解説しているのですが、私には難しすぎてチンプンカンプンでした。
この章だけは、別の人が書いているような違和感がありました。
それもこれも、私の知識不足と理解不足が原因だと思います。

さて、この本の中には、いくつかの「名言」がありました。
私のお気に入りは、次のような名言です。

 ・資本主義社会とは、革新が常態化した社会なのである。
 ・新自由主義が信奉する自由放任の市場は、
  保守が元来重視してきたものを例外なく破壊していくものである。
 ・社会の一体感や連帯感がなければ、自由な社会というものもありえない。
 ・保守は、理論ではなく、態度や生き方である。
 ・ケインズ主義的な経済政策は、その政治的・社会的条件として、
  国民統合を必要とする。
 ・過去を重んじる保守主義とは、本質的に、未来志向なのである。
 ・教養とは、内省の鍛錬と信仰によって、真の理性を育成することである。
 ・保守が守ろうとするのは、あくまで国体である。
  そして、国体においては、「不易」と「流行」は均衡している。
  この均衡こそが、保守主義が保守しようとするものである。

このだけの「名言」を自分のものにできるだけでも、一読の価値はあると思います。
私も、過去を重んじつつも、未来志向でありたいです。

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)

保守とは何だろうか (NHK出版新書 418)