『金融政策入門』(湯本雅士著:岩波新書)を読了しました。
この本の「はじめに」では、
『昨今、書店の店頭には金融に関する書物が山積みになっています。
しかしながら、 基礎の基礎をしっかりおさえたえで、個別問題にこだわりつつ、
しかも全体像を見失いように注意しながら書かれた本は意外に少ないものです。』
と書かれていましたが、間違いなくその少ない本の一つに挙げられる良書だと思います。
全体を通して参考になったのは、
「第5章 デフレに対する処方箋」の、次のような記述です。
・情報が地球的規模で、しかも瞬時に行き交う
IT化とグローバル化という世界では、
情報がすべての市場参加者に行き渡っていないことに基づく歪み、
すなわち、寡占・独占状態が許される余地はない。
関税や輸入制限を含む競争制限的な規制は(原則的には)否定される。
こうした世界で生き延びるためには、技術面でのイノベーションと並んで、
古い体質を温存している経済構造の根本的な改革が不可欠。
こうした観点から見ると、デフレの究極の処方箋は金融緩和などではなく、
日本の経済・社会全般に及ぶ抜本的な構造改革、
それを通ずる生産性の向上なのだ、ということになる。
・安倍内閣あるいは黒田日銀体制の課題もはっきり見えてくる。
要は、三本の矢とはいうものの、もっとも重要なのは最後の一本、
成長戦略ないしは日本の経済・社会・産業構造の抜本的な立て直し、
本格的な改革なのであって、後の二本は
そのための必要な時間を稼ぐために放たれたものであるという認識だ。
また、「おわりに」で著者は、
何が真実で何がそうでないかを嗅ぎわけるための、
次のような一般原則を教示されていて、こちらも大変勉強になりました。
・これまで持っている知識・先入観を捨てて、白紙の状態で臨む。
・積み木の家を作るように、基礎の基礎から入念に築き上げていく。
基礎作業なしに性急に結論を求めるような態度を慎む。
・細部に留意しつつ、しかも全体像(鳥瞰図)を見失わない。
・因果関係の方向、すなわち、
どちらが「因」でどちらが「果」であるかを見極める。
・議論する前に言葉の定義を明確にしておく。などなど。
新書でありながら、
ゼロ金利、量的緩和、アベノミクス、インフレターゲットなど
金融政策に関する多くの事柄を学ぶことができる、とても「真面目」な本だと思います。
- 作者: 湯本雅士
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/10/19
- メディア: 新書
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