しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

民主主義と少数派の横暴

今年から日経新聞「身近な疑問を読み解く やさしい経済学」で連載されていた
加藤創太・国際大学教授の『第3章 民主主義の合理性』は、
いろいろと考えさせられることが多くて、とても勉強になりました。

陪審員定理」、「合理的無知」、「ただ乗りの誘因」、「大数の法則」、
「中位投票者定理」など、私が初めて目にする言葉がたくさん出てきました。

その中でも、「少数派の横暴」に係る解説は、とても分かりやすいものでした。
現代政治では、「多数者の専制」以上に、
少数者が政治的な力を握ることが問題視されています。
例えば、医療、農業、労働といった分野など…。

多数決原理を中核に置く民主主義体制下で、
なぜ、少数派が力を持つのか、このような疑問に対して、
加藤教授は、次のような例を示して分かりやすく解説されています。

『10億円の利益を産業Iにもたらす保護政策があったとします。
 この保護政策により一般消費者は割安な海外製品が購入できず、10億円を損すると考えます。
 有権者のうち産業I従事者は1万人、一般消費者は1億人だとします。
 数からいえば一般消費者が圧倒するので、この保護政策は多数決で否決されそうです。
 しかし1人当たりの影響では、産業Iの関係者は10万円の利益を得るのに対し、
 一般消費者は10円の損失です。
 10万円もの利益がかかっているため、産業Iの関係者は、政治に熱心に働きかけるでしょう。
 政治的な組織を作り、献金や署名を集めます。
 これに対し、一般消費者は10円の問題では政治的に動きません。
 人数も多すぎて、保護政策の反対勢力を結集するのも困難です。
 こうして民主主義の過程では、少数者が多数者を個別撃破していくのです。』

なるほど、そういうものなのですか…。
だから、規制改革は「既得権層」の抵抗で進まないのかな…。

では、民主主義の下で、「少数者の横暴」を制限できないのでしょうか。
加藤教授は、次のような回答を用意されていました。

『一つの規範的な解は、ただ乗りの誘惑に負けない自律的な市民を育てることです。
 もう一つの単純な解は、民主主義の原点、直接民主制の導入です。
 あらゆる争点で国民投票を行えば、多数者が少数者を個別撃破していきます。』

ここでいう「ただ乗りの誘惑」とは、
「誰かが良いものを選んでくれるだろう」という誘因のことで、
誰もが他人任せになれば、集団として良い選択はできないという「真理」は、
誠にもってそのとおりだと思いました。

政治学は「ただ乗り」の学問と言われ、
民主主義における政治的影響力の差は、組織の結束力の差によって生まれるという
加藤教授の解説を読むと、
私たちは、よほど「自律的な国民」に育たないといけないと感じました。

この記事を読んで、間近に迫った東京都知事選挙の行方が気になってきました。
東京都民の皆さんは、きっと「自律的な」判断を下されると思います。