今月19日の日経新聞電子版に掲載された
『黒田日銀1年、インフレ予想巡り総裁と木内委員が「論争」』という記事を
興味深く読みました。
記事によると、
ともに金融政策決定会合のメンバーである黒田総裁と
木内登英審議委員(前野村証券経済調査部長兼チーフエコノミスト)が19日に、
それぞれ別の場所で行った講演で、予想インフレ率について異なる見解を示したそうです。
それぞれの見解を記事から抜粋すると、次のとおりです。
○黒田総裁
・2%の物価上昇率目標を2年程度で実現するという
「明確なコミットメント」とそれを裏打ちする「大規模な金融緩和の実施」が、
人々の予想インフレ率を引き上げてきた。
・一方で、日銀の巨額国債購入で名目長期金利は安定的に推移している。
物価変動を考慮した実質長期金利は低下していることになる。
この実質金利低下が経済を刺激していることで、
日本経済は2%の物価安定目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている。
○木内委員
・異次元緩和がインフレ期待を強める効果を慎重に見ている。
5年、10年といった中長期の予想物価上昇率の上昇は
なお緩やかなものにとどまっている点がその根拠。
・日本の中長期の予想物価上昇率は、
日銀が掲げる物価目標の水準や財・サービスおよび労働市場の需給関係よりも、
潜在成長率や労働生産性上昇率などの供給側の要因で決まる部分が大きい。
そして、少なくとも現時点では2%という(物価目標)水準は
日本経済の実力をかなり上回っている。
・今後の成長力の変化や中長期の予想物価上昇率の変化を踏まえて、
将来的には2%という「物価安定の目標」の水準を再検討する余地もある。
う〜ん、なるほど…。
黒田総裁は、これまでの日銀の政策効果に自信を持ち、
一方、木内委員は、その効果に慎重な見方をされているようです。
ただ、対立したかのように見える両氏ですが、
「一致していると思われる部分もある。」と、記事には次のように書かれていました。
『木内氏は「予想物価上昇率は供給側の要因で決まる部分が大きい」として
構造改革の必要性を指摘したが、黒田氏もかねて成長戦略の重要性に触れてきた。
黒田、木内両氏のそれぞれの主張に対する評価は様々だろうが、
金融政策決定会合での議論が活性化すること自体は良いこと。』
確かにそのとおりだと思います。
審議委員の全員が同じ方向を向いていると、かえって心配になります。
国民のために、委員の皆さんで、大いに議論していただきたいものです。