『ノボさん〜小説・正岡子規と夏目漱石』(伊集院静著:講談社)を読了しました。
かつて、日経新聞「春秋」に、次のようなコラムが掲載されたことがあります。
『松山市を訪れると、まちを覆う俳句熱に驚かされる。
市内49カ所ほか市電に設置される「観光俳句ポスト」への投句が年間約1万句。
歴史的案内柱や記念碑に俳句があふれ、俳句甲子園などもある。
王国といわれるゆえんであろう。
文豪・漱石の誕生に大きくかかわった近代俳句の父・子規が脈々と息づく。』
愛媛松山が生んだ偉大な俳人・子規のことが書かれた本がまた一冊増えて、
とてもうれしく思います。
壮絶な子規の闘病生活が描かれていますが、
不思議なことに、何とも言えない清々しい読後感が、この本にはあります。
そして、この本の中で、強く印象に残っているのが、次の一節です。
『明治という時代の強さは、この清廉なこころ、自分の信じたもの、
認めたもにむかって一見無謀にに見える行為を平然となす人々が
まだあちこちにいたことが挙げられるかもしれない。
なによりも清廉、つまり損得勘定で動かなかったところに行動の潔さがあった。
そして何より子規は己自身の仕事として、俳句の革新をしようとしたのである。』
まるで司馬遼太郎の「坂の上の雲」に出てくるような文章です。
つくづく「明治の人は偉かった」と思います。
とにもかくにも、伊集院さんが書かれているだけに、
格調高い内容の本でした。
この本を読まれた方は、是非一度、俳句の里・愛媛松山にお越しください。
- 作者: 伊集院静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: 単行本
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