しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

心の成長

今月12日の日経新聞に掲載された
『がんと向き合う』という記事には、心を打たれました。

20年以上にわたってがん患者に寄り添ってきた
精神科医の大西秀樹さんに「痛みとは何か」を聞いた記事です。

大西さんによると、
がん患者が抱える痛みには肉体的痛み、精神的痛み、社会的痛み、魂の痛みがあり、
それぞれ影響し合っているそうです。

このうち、肉体的痛みと精神的痛みは、
がんで亡くなった義兄の苦しみを間近に見てきただけに少しは理解できますが、
社会的痛みと魂の痛みについては、
次のような説明を読んで、ようやく理解することができました。

『会社でバリバリ働いたり、主婦として一家の暮らしを支えたりしていた人が、
 がんと診断された瞬間、仕事や社会生活から切り離され、
 「がん患者」として生きていかなければならなくなります。
 孤独感や疎外感のほか、自分の地位や役割がなくなってしまうのではとの不安が募り、
 離職や経済的な不安も頭をよぎります。こうした苦悩が「社会的痛み」です。』

『一方、自分がこの世から消えて無くなるのではないか、という恐怖や、
 人から援助されるだけの存在になるのではないか、
 生きている意味があるのだろうかと苦悩するのが、
 人間の尊厳にかかわる『魂の痛み』です。』

そして、記事で紹介されている50代の女性の次の言葉には、強く心を打たれました。

『この病気で強くなることができた。
 仲間に出会い、私の周りにあった幸せに気づくこともできた。
 できなかったことばかりを考えない。
 やりたかったことがあるし、今、できることもある。
 この病気に感謝することがある。悔しいけどね』。

絶望的な状況でも、「人生の意味や存在意義を問い、
思索を通じて人間的に成長する患者を多く見てきた」と大西さんは述べられています。

そういえば義兄も、その人生の最後の最後まで、
周りの人への気遣いを欠かさない人でした。

小心者の私には、とてもできそうにありません。