独立行政法人経済産業研究所から、
『経済レジリエンスの構築と経済成長』というレポートが公表されています。
全文を読んだわけではありませんが、
有難いことに、レポートの冒頭には次のような要旨が掲載されていて、
アウトラインを理解するうえでとても助かります。
『経済のグローバル化や情報技術の進展は、各国の国民生活を豊かにする一方で、
金融危機、自然災害、テロの世界的な連鎖を助長して、国民生活を不安定化している。
各国においては、潜在的なリスクの最小化、顕在化したリスクへの適切な対応が求められる。
本稿では、国民生活の安心・安全のための
「国家強靭性(ナショナル・レジリエンス)」に関する議論を整理するとともに、
強靭性と経済成長に関するデータを概観してその政策的なインプリケーションを導き出した。』
最近、この「レジリエンス」という言葉をよく耳にしますが、
これが個人だけでなく、国家にも当てはまるとは知りませんでした。
ちなみに、レポートでは、「レジリエンス/強靭性」とは、
何らかのリスクや危機を「乗り越える力」を意味するが、それは、
①致命傷を受けない (致命傷回避)
②被害を最小化する (被害最小化)
③すぐに回復する (回復迅速性)という3つの要素に分解され、
①ショック耐性 (危機によるダメージを最小化する力)と
②回復力 (被ったダメージをすぐに回復する力)という
2つの力で構成されると説明されています。
そして、レポートの最後には、次のような重要論点がまとめられています。
①「有事」を想定したレジリエンスの取り組みは,
「平時」における「競争力の増進」や「経済成長」をもたらす。
②経済レジリエンスは,「市場の原理」のみでは確保する事が困難であり,
(広義の)インフラを見据えた適切な「統治=ガバナンス」に基づく
「プランニング=計画」が不可欠である。
③経済レジリエンスの確保のためには,
金融政策と適切に連携をした十分な「財政政策」
(アベノミクス「第二の矢」)が不可欠である。
④経済レジリエンスの確保のためには,
経済システムの有り様を論ずるだけでは不十分であり,
それに関わる人々の「社会心理」や「コミュニティの力」、
「組織の力」を活用することが不可欠である。
長々とメモ代わりに書いてきましたが、
このレポートで重要なのは、次の記述ではないかと思われます。
『今、世界経済は、実に様々な「危機」に晒されており、
そのような「危機」に満たされた時代の中で「成長」し続けるためには、
どんな危機にも負けないレジリエントな「しなやかな活力」が必要不可欠なのだ、
という共通認識がある。』
改めて考えてみると、
危機から幾度も立ち直った我が国、日本民族には、
案外、「レジリエンス」というDNAが流れているのかもしれません。