昨日19日の日経新聞「文化欄」は、
『思考停止へ警鐘、現代に響く〜
哲学者アーレントに脚光 原発や企業不祥事 読み解くヒントに』でした。
以前、矢野久美子・フェリス女学院大教授の
「ハンナ・アーレント」(中公新書)を読んでいただけに、
記事を読んで、さらに理解が深まったような気がしています。
アーレントの「思想の核」と思われる個所を記事から拾ってみました。
・自分のやっていることの意味を考えない普通の人が、途方もない災厄を引き起こす。
アーレントが「悪の陳腐さ」と呼ぶ考え方は、
現代の様々な社会事件をとらえる上でも有効だ。
・主著「全体主義の起源」でアーレントは、
大衆社会の到来が全体主義を生み出す契機になったと分析。
経済の悪化や不安定な国際情勢によって社会不安が広がると、
大衆はわかりやすい世界観を説く政治勢力に傾斜するという。
・複数性とは一人ひとりが違った見方で世界を眺めることで、
初めて世界はまともな形で存在するという考え方のこと。
みんなの意見が一致することよりも、
それぞれが違った意見をぶつけ合っている状態の方が正常であり、
全体主義はその破壊である。
・アーレントは、本来地球上にはない原理を操るという意味で
原子力を「宇宙科学」と呼び、それを利用する原発は
「宇宙の力をその猛威のまま、人間世界に導き入れる行為」だと考えた。
・複雑で厄介な問題ほど粘り強く考えなければならない。
この記事ではその冒頭で、
「意味を深く考えない行為が大きな破局を引き起こすという指摘は、
企業不祥事や原子力発電など現代の問題を読み解く視点も与えてくれる。」
と解説されていました。
改めて記事を読み終えて、
粘り強く考えることが、私の最も不得意な行為ではないかと深く反省しています。
一度、映画も観てみたいです。