腹立たしいというより、とても悲しい気持ちになりました。
全盲の男性が電車で出勤途中、
連れていた盲導犬が何者かに刺されていたという事件です。
盲導犬は、刺された痛みをこらえて鳴き声を上げなかったそうで、
そんなことを聞くと、
刺した人間より我慢した盲導犬の方が、
遥かに人間らしく、いや、人間以上に立派に思えてくるのです。
この事件に関連して、今日29日の産経新聞「産経抄」には、
私の気持ちを代弁してくれているようなコラムが掲載されていました。
そこには、次のような一節がありました。
『ワンピース姿の少女が、ジャーマンシェパードの盲導犬を伴っている。
東京・新橋の駅前広場の片隅にある「乙女と盲導犬の像」に気づく人が、
どれほどいるだろう。
像の台座には、「月光仮面」の原作者として知られる、
故川内康範(こうはん)さんのこんな詩が、刻まれている。
「街は こんなにも明るいのに どこかに翳(かげ)りがある 心のささくれ」。
犯人は一体、どんな心のささくれの持ち主なのか。』
この中の「ささくれ」という言葉は、
どこかで聞いたことがある言葉だと考えていたら、やっと思い出しました。
中島みゆきさんの「糸」という曲の中に、その言葉はありました。
♪なぜ生きていくのかを 迷った日の跡のささくれ
夢追いかけ走って ころんだ日の跡のささくれ
こんな糸がなんになるの 心許なくて ふるえていた風のなか
犯人は、中島さんの詩のような心境だったのでしょうか?
ならば、まだ救いがあるような気がします。
だって、詩は次のように続いているのですから……
♪織りなす布は いつか誰かの傷をかばうかもしれない
本当は、善良な人であったと信じたいです。