『博士の愛した数式』(小川洋子著:新地用文庫)を読了しました。
不思議な読後感のある本でした。
「80分しか記憶が持たない博士」を通じて、
結局のところ、作者は何を読者に伝えたかったのか。
私は、人生とは「一期一会」であること、
今この時の「出会い」や「風景」や「時間」は、一生に一度きりであることを、
読者に伝えたかったのではないかと思っています。
本の中の次のような文章が、私にその気持ちを強くさせました。
『あるべきものがあるべき場所に納まり、
一切手を加えたり、削ったりする余地などなく、
昔からずっと変わらずそうであったかのような、
そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態。
博士はそれを愛していた。』
『ただ、三人で共有したささやかな風景の数々は色褪せず、
むしろ時間が経てば経つほど鮮やかに浮かび上がり、
私たちの気持ちを温かくした。』
『私がおります。義弟は、あなたを覚えることは一生できません。
けれど私のことは、一生忘れません。』
それにしても、作者の小川さんは、
阪神タイガースのファンなのでしょうか?
もしそうだとしたら、とてもうれしく思います。
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11/26
- メディア: 文庫
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