しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

一期一会の本

博士の愛した数式』(小川洋子著:新地用文庫)を読了しました。

不思議な読後感のある本でした。
「80分しか記憶が持たない博士」を通じて、
結局のところ、作者は何を読者に伝えたかったのか。

私は、人生とは「一期一会」であること、
今この時の「出会い」や「風景」や「時間」は、一生に一度きりであることを、
読者に伝えたかったのではないかと思っています。

本の中の次のような文章が、私にその気持ちを強くさせました。

『あるべきものがあるべき場所に納まり、
 一切手を加えたり、削ったりする余地などなく、
 昔からずっと変わらずそうであったかのような、
 そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態。
 博士はそれを愛していた。』

『ただ、三人で共有したささやかな風景の数々は色褪せず、
 むしろ時間が経てば経つほど鮮やかに浮かび上がり、
 私たちの気持ちを温かくした。』

『私がおります。義弟は、あなたを覚えることは一生できません。
 けれど私のことは、一生忘れません。』

それにしても、作者の小川さんは、
阪神タイガースのファンなのでしょうか?
もしそうだとしたら、とてもうれしく思います。

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)