なんともやりきれない思いをどのように表現したらよいか、
そんな暗澹たる思いを、今日11日の産経新聞「産経抄」が代弁してくれていました。
盲学校に通学していた全盲の女子生徒の白杖が、
正面から歩いてきた人物にぶつかって相手が転倒し、
その相手が立ち上がる気配を感じた直後に、
背後から右膝の裏を強く蹴られ、全治3週間のけがを負った、
という事件のことです。
コラムには次のように書かれていました。
『7月には、さいたま市に住む全盲の男性が連れていた盲導犬が、
何者かに刺される事件があったばかりだ。
そのとき、「犯人は一体、どんな心のささくれの持ち主なのか」と書いた。
もはや心そのものを失っている、人物の仕業としか思えない。
三宮さんは、全盲の自身の状態を、
「シーン(風景)レス(無い)」という美しい造語で呼んできた。
ちなみに「ハート(心)レス」という言葉は、辞書に載っている。
「(人に)冷酷な」という意味である。』
(この文章に登場する三宮さんとは、
幼い頃、病気で視覚を失ったエッセイストの三宮麻由子さんのことです。)
朝の通勤途上の人混みのなか、白杖で歩く若い女性の方をよく見かけます。
路上の点字ブロックを確認しながら歩かれていますが、
周りの人は先を急いでいても、
その方に何とかぶつからないよう、気を使っている様子がうかがえます。
小心者の私といえば、
もし自分が同じように視覚に障害を持っていたとしたら、
「この人のように人混みの中を歩く勇気があるだろうか?」、
「困難に打ち勝って、人生を前向きに生きていけるだろうか?」と、
いつも尊敬というか、畏怖のまなざしを向けています。
ですから、暴力をふるう人の気持ちが全く理解できません。
それとも、今の社会そのものが「ささくれ」という状況なのでしょうか?
いろいろと考えてしまいます……。