『「反日」中国の文明史』(平野聡著:ちくま新書)を読了しました。
著者は、
『とくに日本側の問題として、
中国が発する考え方や物事そのものを踏まえて
その動向を冷徹にとらえるのではなく、
あくまで日本の側の期待や不満のみから中国を描いてしまいがちである。
その結果、日本が思っていた中国とは別の中国に足下をさらわれ、
それがいっそう周辺環境への不安をかきたてるという悪循環が起こる。』
と指摘されてうえで、
『本書の目的は、読者の皆さんに
「中国はなぜこう考えるのか」という問題を長い
歴史から考える素材を示すことにある。』と述べられています。
お言葉どおり、
本書は、現在の中国を、その歴史を踏まえて理解するうえで、
新書という限られた紙面の中で、
十分すぎるほどの素材を与えてくれていると思います。
いろいろと勉強になりましたが、次の文章が印象に残っています。
『世界各国・各地域の歴史がともに示すのは、
自己の立ち位置に不安を覚える政治・社会ほど、
なりふり構わず自らの生き残りを目指すあまり、
あらゆる「強さ」に訴えようとすることである。
今の中国のあり方も、そのような状況が
100年近く続いてきた結果に過ぎない。』
「近くて遠い国・中国」を理解するうえで必読の書だと思いました。
なお、私は今年の5月に、生まれて初めて中国・上海の土を踏みました。
どこまでも続く広大な大地…。
国土と言い、歴史と言い、思想と言い、
やはり中国は、不安定さを内在しつつも、
「巨大な国」であることは間違いないと、その時感じた次第です。
- 作者: 平野聡
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/07/09
- メディア: 新書
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