昨日2日の日経新聞「経済教室」に掲載された
河野勝・早稲田大学教授の
『総選挙で問われるもの㊥〜大義不在 野党にも責任』というタイトルの論考は、
[保守主義」や[リベラル」の意味を改めて考える契機となり、とても勉強になりました。
特に、後半部分の記述は説得力があったので、
少々長くなりますが、省略せずにこの日記に残しておこうと思います。
『直面する課題がリベラルなアジェンダであるのに、
保守的な政治勢力が政権を担っているというミスマッチは、
今回の選挙の争点構図にその影を落としている。
現在、安倍氏と自民党はアベノミクスへの信任を問う選挙と位置けようとしている。
民主党のほうもその挑戦を受けて立ち、
アベノミクスの失敗を有権者に印象づけようとしている。
しかし、アベノミクスとはデフレ脱却から経済成長を目指すための手段にすぎず、
成長した後にどんな社会を構築すべきかについて何かを語るわけではない。
本来リベラルの側が争点とすべきなのは、いつのまにか手段が目的化し、
成長だけが優先的な経済目標として自明視されることの是非であるはずだ。
一般に、保守主義とは「何に反対するかによって自らを定義するもの」
(米保守系コラムニストのジョージ・ウィル氏)であり、
現状を維持し守ることを究極の理念および行動指針に据える。
もちろん保守政党も現実的な対応として「改革」を訴えるが、
あくまで現状の漸進的な改善であり、抜本的な「変革」を目指すわけではない。
漸進主義のリスクは、たとえるならば、
岩盤プレートが蓄積されたエネルギーを一気に放出して大地震を起こすように、
変化の圧力を支えきれなくなったときに突如として暴発が起こるという可能性である。
リベラルアジェンダにリベラル勢力が応答し、ミスマッチが解消されるようになるまで、
われわれはそうしたリスクを引き受けなければならないのである。』
ここで述べられているリベラルなアジェンダとは、
人口減少という、我が国が長期的に抱える重要課題に派生的に生じる政策課題のことで、
女性の社会進出、子育て環境の整備、外国人労働者や移民の受入れが例として挙げられています。
そして、これらはどれも、
『既存の社会構成や価値観、あるいは旧来からの伝統や文化に変更を迫るという意味で
保守よりもリベラルのほうが政策アイデアを豊富にもつべきアジェンダ(政策課題)である。』
と河野教授は指摘されています。
う〜ん、なるほど…。
突如として爆発が起こる前に、リベラル勢力にも力をつけてもらう必要があるのですね。
そういえば、同じ日の朝日新聞「天声人語」には、
「パレートの法則(2:6:2)」に関連づけた、
「普通の割合が減って、集団が二極化すると不安定になる。」という記述もありました。
6割という「普通」が存在することにも意味があるように思います。