しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

早い者勝ち?

日本銀行の黒田総裁が、クリスマスの25日に
日本経済団体連合会審議委員会において講演された内容を日銀HPで読みました。
演題は、『「2%」への招待状』です。

この講演のなかで黒田総裁は、私が普段、疑問に思っていることを、
「日銀としても耳にしている」として、次のように述べられています。

『「『量的・質的金融緩和』のメリットを受けているのは、
 大企業と金融資産を保有している富裕層だけで、
 全体に拡がっていないのではないか」、「デフレ脱却とはいっても、
 物価が上昇する一方、賃金がそれに見合って上昇しなければ、
 生活はかえって苦しくなるのではないか」といった意見を耳にします。』

これに対する答えを講演録から探してみると、
おそらく次の箇所ではないかと、私は理解しています。
少々長くなりますが、該当箇所を引用させていただきます。

まず、賃金の上昇については、
『「物価の伸びに賃金が追い付かず実質賃金がマイナスとなっている」
 という見方が拡がっていますが、
 これは、消費税率引き上げを含めた物価上昇率で計算しているためです。
 来年4月には、消費税率引き上げが物価の前年比に与える影響は無くなります。
 こうしたことを踏まえると、基調的な実質賃金の動きは、
 消費税率引き上げの影響を除いたベースで判断するほうが良いと考えられます。
 いずれにしても、マクロ的には賃金は上昇し、雇用者数も増加しているため、
 雇用者所得は2%程度の伸びを続けています。』

次に、量的・質的緩和のメリットについては、
『もっとも、移行途上にある現時点においては、「パイ」の拡大のメリットが、
 グローバルに展開する企業や金融資産を保有する人などに偏在していることは否定できません。
 もとより、中小企業の収益や家計の所得も、デフレ期に比べれば増加しており、
 多くの人が何らかのメリットを受けているのですが、
 その程度には、企業規模や業種、家計の所得階層などによってばらつきがあります。
 この事実は、単に「パイの分配」の問題に留まらず、
 次の循環を作るうえで重要なポイントです。
 すなわち、多くの「パイ」を獲得した主体の支出性向が低い場合、
 次の循環が働かなくなるからです。
 高い収益を挙げている企業が積極的に「収益を使っていく」ことが求められています。』

なるほど…。大変勉強になりました。
いつも有難く思うことですが、日銀のHPにアップされている
総裁や審議委員の講演・挨拶は、私にとって金融・経済の「教科書」です。
これからも、よく読んで、世の中の動きを勉強していきたいと思います。

さらに、この講演で黒田総裁は、
ダーウィンの有名な言葉を紹介され、企業経営者にメッセージを送られています。
おそらく、これが「招待状」なのでしょうね…。

『要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。
 デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、
 2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。
 企業経営のルールブックが変わるということです。
 進化論を唱えたダーウィンは、
 「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」
 と言ったと伝えられています。
 いち早く環境変化を先取りし、
 「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、
 新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。』

私も、日本の経済成長に対する「期待」を失わないようにしたいと思います。

追記
 同じ25日には、岩田日銀副総裁が、日経新聞「経済教室」に、
 『質的・量的金融緩和の論点〜「レジーム転換」が効果発揮』
 という論考を投稿されていました。
 岩田副総裁によると、
 「金融政策が実体経済に影響するまでには時間がかかる」とのことでした。

 特に、賃金上昇は、景気回復から遅れて現れる経済動向の遅行指数なのでしょうね…。
 (公務員には給与制度の総合的見直しで、恩恵がないかもしれませんが…。)
 こちらの論考も大変勉強になりました。