『歴史認識とは何か』(細谷雄一著:新潮選書)を読了しました。
著者は、本書の目的を
「イデオロギー的な束縛」、「時間的な束縛」、
そして「空間的な束縛」という三つの束縛から戦後史を解放して、
よりひろい器の中に「戦後史」を位置づけし直すことだと述べられています。
そして、戦前の日本が陥った問題は、
平和主義に背いて軍国主義の道を歩んだことだけでなはく、
国際主義的な精神が欠落して、
国際情勢を適切に認識できなくなっていったことが
より致命的だったこと。
また、戦前の日本が、軍国主義という名前の孤立主義に陥ったとすれば、
戦後の日本はむしろ平和主義という名前の孤立主義に
陥っているというべきではないか、と指摘されています。
う~む、とても鋭い御指摘です。
このように、本書には印象に残る記述がたくさんあるのですが、
なかでも「圧巻」は、著者が本書の最後に書かれた
次の格調高い文章ではないかと思います。
多くの人に読んでもらいたいので、
少々長くなりますが、引用させていただきます。
『他方で、現代に至っても日本を取り巻く国際環境は厳しく、
また孤立主義の誘惑は強力である。
他国を批判して、国際社会の不正義を罵り、
また圧倒的な世界大国であるアメリカを軽蔑して
日米協調の精神を拒絶することは、つねに多くの日本人を魅了してきた。
しかしながら、そのような安易で破滅的な選択肢を
われわれは拒絶しなければならない。
自らの正義を絶対視して他国の価値を嗤い、
国際社会における正義や規範を無力であると突き放し、
自らの価値を絶対的で自明な正義として語ることは、
戦前の日本が国際社会から孤立して破滅したときに歩んだ道程と
同じものではないか。
どれだけ苦しくても、どれだけ困難であっても、
他者に語りかけ、他者の理解を求めて、
他者の抱く価値を尊重することから、
日本が進むべき国際主義の道は始まるのだろう。』
日本のこれまでの歩みを理解し、これからの進むべき道を考える上で、
本書は必読の書籍ではないでしょうか…。
多くのことを学ぶことができて、本書に出合えたことに感謝しています。

戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで (新潮選書)
- 作者: 細谷雄一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本
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