私のように、金融・経済の知識が乏しい人間にとって、
日銀総裁や審議委員の講演録を読むことが、その理解促進に役立っています。
それはまるで、無料で手に入る「生の」教科書のようなものです。
今月6日の内外情勢調査会における
黒田総裁の『2%の「物価安定の目標」実現に向けた課題』という講演も、
最近の金融・経済情勢を知るうえで大変勉強になりました。
たとえば、次のような記述です。
・輸出や生産のもたつきにもかかわらず、企業収益が増加を続けるというのは、
わが国の過去の景気回復局面ではあまりみられなかった現象であり、
その背景としては、第一に、内需がしっかりしていること。
第二に、新興国経済の減速もあって
原油をはじめとする資源価格が下落していることが、
交易利得の改善を通じて、価格面から収益の押し上げに寄与していること。
・わが国の過去のデータをみると、
賃金上昇率と物価上昇率は概ねパラレルに動いていることが分かる。
「物価だけ上がって、賃金上昇がそれに追いつかなければ、
実質所得が低下し、消費にマイナスの影響を与える」
といった意見が聞かれるが、少なくとも経済全体としては、
そうした事態が持続的に生じることはない。
・実際に生じるのは、「賃金も物価も上がる」状況か、
「賃金も物価も上がらない」状況のいずれかである。
賃金上昇と物価上昇は、いわばコインの裏表のようなもの。
日銀が現在行っている「量的・質的金融緩和」は、
決して無理に物価だけを引き上げる政策ではなく、
経済のメカニズムに従って、賃金の改善を伴うかたちで
緩やかな物価上昇を実現しようとするもの。
・企業が高水準の収益を、
設備投資や賃金支払いなどの支出に必ずしも十分振り向けず、
その多くを手許の現預金として保有していることの背景には、
現状においても、広い意味での「デフレマインド」が
必ずしも払拭されていないということがある。
私の肌感覚としては、消費税増税後、財布の中身は知らぬ間に目減りし、
一方で、給与収入はここ10年以上、ほとんど変わっていないせいか、
家計はいつも四苦八苦の状態が続いているような気がします。
黒田総裁によれば、賃金上昇と物価上昇はコインの裏表で、
物価が上昇すれば、賃金も上昇するとのことなので、
これは喜ばしいと思っていたのですが、私は来年3月には定年退職…。
どうやら、「量的・質的金融緩和」の恩恵を受けずに
現役時代を終わってしまいそうです。トホホ……。