しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

内部留保?それとも賃金?

時事通信社の配信記事によると、
麻生財務大臣が今月5日の信託協会の新年賀詞交歓会で行ったあいさつで、
企業の内部留保蓄積が328兆円にまで膨らんでいることを指摘し、
「まだカネをためたいなんて、ただの守銭奴にすぎない」とその「体質」を批判したそうです。
また、この「守銭奴」発言は、
「企業に内部留保を賃上げや設備投資に回すよう求める中で出たものだ」
との解説がありました。

この記事を読むと、一般国民の感覚からすれば、
財務大臣は、至極当然のことをおっしゃっているように聞こえます。
「そんなにお金を貯めているのなら、
少しは私たち労働者の賃金を上げてくれればよいのに」と…。

ところで、「企業の内部留保」に関しては、
昨年11月11日付けで国立国会図書館が発行した
『企業の内部留保をめぐる議論』というレポートがとても参考になります。
そのサマリーには次のように書かれていました。

内部留保は設備投資等の原資と見なすこともでき、
 一概にその額だけを見て過剰と見なすことはできない。
 ただし、投資等に充てられることなく保有されている現預金の多寡は、
 資本効率性の観点から問題となり得る。

・企業の国内設備投資が低迷する一方で、対外直接投資は活発化している。
 企業の収益増が国内の雇用改善につながりにくくなっていること、
 労働生産性の上昇に対して実質賃金の上昇が抑制されてきたことが、
 内部留保批判の一因となっている。

・企業には企業経営の効率化や労働生産性の上昇に見合った付加価値の分配、
 政府には国内の投資環境を整えること等が求められよう。

さらに、賃金の労働者への還元については、次のような解説がありました。
少々長くなりますが、引用させていただきます。

『〜(略)〜こうした状況に鑑みると、
 企業の内部留保を賃金に回すという意見にも相応の根拠があるようにも見えるが、
 ここで注意しなければならないのは、内部留保を原資にすることが適切かという点である。
 まず、ストックの内部留保は設備投資等に充てられているものもあり、
 すべて取り崩せるわけではない。
 また、賃金は利益から支払われているわけではなく、費用に含まれている。
 費用は売上高から引かれ、それが利益となり、
 利益から法人税や配当を支払った後に残るものが内部留保である。

 したがって、企業の利益を労働者に還元させたいならば、
 費用である賃金を内部留保から還元する以前の問題として、
 そもそも費用として計上される労働者の賃金を見直すことが先決である。
 労働分配率を見直し、費用を厚めに計上することで、
 最終的なフローの内部留保を小さくするような方法を模索するのが妥当であろう。』

はぃ、大変よく分かりました。
財務大臣は国民の声を代弁されたのかもしれませんが、
このレポートを読むと、「守銭奴」発言は過激すぎたのかもしれません。

あぁ〜、それにしても
「328兆円」という数字は、とんでもない金額だと思います。
どうか、経済の好循環のため、有意義にお金を使ってくださいね…。