しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

お茶の哲学

NHKテレビテキスト『100分de名著〜茶の本岡倉天心』を読了しました。

岡倉天心」という名前は聞いたことがありましたが、
恥ずかしながら、「茶の本」という本の存在は知りませんでした。

番組HPによると、
この本は、新渡戸稲造「武士道」とほぼ同じ時期に英語で出版され、
日本文化の啓蒙書として世界中で読み継がれているとのことでした。

また、『「茶の本」といっても、茶道の指南書ではなく、
近代欧米の物質主義的文化と対比して、
東洋の伝統精神文化の奥義を解きつくそうという壮大な構想をもとに書かれた
天心流の文明論です。』という解説もありました。

さて、テキストを読んで印象に残った記述が、次の2箇所ありました。

『日本文化の本質は、戦いよりも平和と調和を求めることにあるのであり、
 そうした理想を集約したのが茶なのだと説いています。
 たとえば、茶室に入るときは武士であっても刀を外します。
 また、茶会の席では侍も庶民も身分の区別はありません。

 つまり、一緒にお茶を飲むことによって、平和を達成できるのです。
 欧米人は、茶など幼稚なままごとだと思っているかもしれないが、
 実はそこにこそ、戦いよりも偉大な哲学があるのだというのが、
 天心の伝えたいことであり、天心が茶に見た日本文化の本質だったのです。』

『人は死をどのように迎えればよいのか。
 そこで語られるのが、茶人の中の茶人、利休の死についてです。
 「美しく生きてきた者だけが美しく死ぬことができる」と述べているように、
 天心は、生と死は表裏一体のものであり、
 生の感性である死は至高の芸術であると説きます。』

う〜ん……、この「死生観」に関する記述を読むと、
スティーブ・ジョブズの次の言葉を思い起こします。

『死こそ生命がもたらした、この世で唯一最高の発明だ。
 死は古きものを取り除き、新しきものに道を譲る』

「お茶」に「深遠な哲学」があることを、この本を読んで理解できました。
日常生活でお茶を飲むときも、これからは姿勢を正さなければなりません……。

岡倉天心『茶の本』 2015年1月 (100分 de 名著)

岡倉天心『茶の本』 2015年1月 (100分 de 名著)