今月1日の日経新聞「日曜に考える」に掲載された
トマ・ピケティ氏へのインタビュー記事は、大変勉強になりました。
記事のなかでも、興味深かったのは、
「賃上げ実現」と「出生数」に関する次の問答です。
(聞き手)
安倍政権は金融緩和だけでなく、賃上げ実現にも力を入れています。
(ピケティ氏)
実際の賃上げの幅はどのくらいなのか。そして政府部門の賃金はどうか。
(聞き手)
大手企業では昨年は2%くらいです。昨年は公務員の給与カットをやめました。
今年は民間の後を追い賃上げに動くでしょう。
(ピケティ氏)
それでは不十分だと思う。もしデフレに終止符を打ち、
インフレに転換したいなら、政府は民間の後を追うのではなく、
率先して公務員の賃金を上げるべきだ。
消費税増税の分を除いた消費者物価上昇率が、
1%を下回っているというのはやはり低い。思い切った措置が必要だろう。
(聞き手)
出生数については。
(ピケティ氏)
男女平等で、家庭支援的な仕組みが必要だ。
おかげでスウェーデンやフランスは出生率が2程度にまで回復している。
半面、ドイツやイタリアは出生率が低いなど、欧州でばらつきがある。
出生数の回復は施策を講じても成果が出るまで時間がかかるので、
短期的には賃金増によるインフレ実現の方が重要だ。
今、世界的に話題のピケティ氏から、「率先して公務員の賃金を上げるべきだ」
というお言葉を頂戴するとは思いも寄りませんでした。
政府は、デフレ脱却を唱えながら公務員給与については抑制してきました。
人事院や人事委員会から取組みを求められていた「給与制度の総合的見直し」も、
平成15年度からの実施が既に決定されていて、
国家公務員をはじめ、ほとんどの地方自治体において、
基本給が平均で2%引き下げられると聞き及んでいます。
公務員給与は民間の賃金水準に準拠するといいつつも、
地方では、公務員給与に民間が準拠するという逆パターンもあり、
こうなると民間賃金が上昇することは大変難しくなります。
……こんなことを常日頃思っていたところでの今回のインタビュー記事でした。
ピケティ氏が指摘しているように、
賃金増によるインフレを是非とも実現したいものです。