『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー著、芹澤恵訳:新潮文庫)を読了しました。
一言でいうと、実に面白い本でした。
この本がなぜ面白いかについて、
「訳者あとがき」に、小説の「観点」が挙げられていました。
真理の探究はどこまで人間に許されるのか、
科学の進歩は人間に幸福をもたらしうるのか、
引き受けることのできないほどの責任を突きつけられたときの人間のありよう、
善良な心をむしばんでいく孤独のすさまじさ、
偏見と冤罪、平凡な幸福を求める心と名誉欲のせめぎあい……。
このほか、本文中には次のような「箴言」も登場します。
・心の安定をもたらす何よりの妙薬は、決して揺らぐことのない目的をもつこと
・人を深く愛するには、相手が尊敬できる人間でなくてはならない
・科学の研究には常に、発見と驚異という糧がある
・人の心にとって何よりも辛いのは、
息も継がせぬ勢いで事件が続いて感情が昂ぶったそのあと、
不意に澱んだような静けさが訪れ、何も起こらず、
ただ起こってしまったことが動かしがたいものとなって、
やがて魂から希望も恐怖さえもが失われていく、そんなときではりますまいか
・苦労というものは、あまりにも長く続くと、
人間の最低限の感覚すら摩滅させてしまう
・人間の心には、本質的に、
忘却への誘いを柔軟に受け入れようとする性向が備わっているのかもしれない
・人を魅了してやまない格別にすぐれた人物でなくても、
幼いころを共に過ごした友人には、
その後に得た友人とはくらべものにならないほどの影響力がある……などなど
そして、何よりましてこの本の魅力は、文章の平易さと美しさだと思います。
特に、自然を描写する文章の美しさには感嘆してしまいます。
それはまるでポエムのようです。
訳者の方は、「あとがき」で次のように書かれていました。
『作中で怪物が放つ「自分は何者なのだ?」という孤独に満ちた悲痛な叫びは、
誰しもが、おそらくは若い時分に一度は自分に向けて突きつけたことのある
疑問ではあるまいか。』
確かに、おっしゃるとおりです…。
ですから、私もこの本は、「考えることにまっすぐな若い世代」の方々に、
是非読んでほしいと思います。
- 作者: メアリーシェリー,Mary Shelley,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/12/22
- メディア: 文庫
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さぁ次は、廣野由美子・京大大学院教授の
『批判理論入門〜「フランケンシュタイン」解剖講義』(中公新書)に挑戦です。