憲法記念日の今日は、あいにくの雨となりました。
このところお天気が続いていたので、花木にとっては恵みの雨かもしれません。
さて、『春の海〜豊饒の海・第一巻』(三島由紀夫著:新潮文庫)を読了しました。
本棚にあったのを偶然見つけて読み始めました。
おそらく妻が買った本なのでしょう…。
私が三島由紀夫の本を読むのは、随分久しぶりのような気がしますが、
今読んでも、その語彙の豊富さに圧倒されてしまいます。
例えば、主人公・清顕のことを外的・内的に表現した次の文章…。
『清顕のその美貌、その優雅、その性格の優柔不断、その素朴さの欠如、
その努力の放棄、その夢みがちな心性、その姿のよさ、
その夢みるような長い睫〜(以下略)〜』
『僕は一人取り残されている。愛欲の渇き。運命への呪い。
はてしれない心の彷徨。あてどない心の願望。
……小さな自己防衛。小さな自己弁護。小さな自己欺瞞。
……失われた時と、失われた物への、炎のように身を灼く未練。年齢の空しい推移。
青春の情けない閑月日。人生から何の結実も得ないこの憤ろしさ。〜(略)〜
……それが僕だ!』
また、人生の箴言のような文章も魅力的です。例えば、次のような文章…。
『時間にとっても、空間にとっても、
境界に立っていることほど、神秘な感じのするものはない。』
『どんな重大事でも放置しておけば、その放置しておくことから利害が生まれ、
誰かがこちらの味方に立つのである。これが伯爵の政治学であった。』
『咲いたあとで花弁を引きちぎるためにだけ、
丹念に花を育てようとする人間のいることを、清顕は学んだ。』
そして、この物語のテーマを暗示しているような気がする次の文章…。
『生と思想が同一のものであるような哲学をおしひろげれば、
無数の生の流れを統括する生の大きな潮の連環、
人が「輪廻」と呼ぶのも、一つの思想でありうるかもしれないのだ。』
人生のこの時期に、本棚で偶然、三島由紀夫の本を見つけたのも、
何かのご縁かもしれません。物語の続きを根気よく読むことにします。

- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/10
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