しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

ご縁のある本?

憲法記念日の今日は、あいにくの雨となりました。
このところお天気が続いていたので、花木にとっては恵みの雨かもしれません。

さて、『春の海〜豊饒の海・第一巻』(三島由紀夫著:新潮文庫)を読了しました。
本棚にあったのを偶然見つけて読み始めました。
おそらく妻が買った本なのでしょう…。

私が三島由紀夫の本を読むのは、随分久しぶりのような気がしますが、
今読んでも、その語彙の豊富さに圧倒されてしまいます。

例えば、主人公・清顕のことを外的・内的に表現した次の文章…。

『清顕のその美貌、その優雅、その性格の優柔不断、その素朴さの欠如、
 その努力の放棄、その夢みがちな心性、その姿のよさ、
 その夢みるような長い睫〜(以下略)〜』

『僕は一人取り残されている。愛欲の渇き。運命への呪い。
 はてしれない心の彷徨。あてどない心の願望。
 ……小さな自己防衛。小さな自己弁護。小さな自己欺瞞。
 ……失われた時と、失われた物への、炎のように身を灼く未練。年齢の空しい推移。
 青春の情けない閑月日。人生から何の結実も得ないこの憤ろしさ。〜(略)〜
 ……それが僕だ!』

また、人生の箴言のような文章も魅力的です。例えば、次のような文章…。

『時間にとっても、空間にとっても、
 境界に立っていることほど、神秘な感じのするものはない。』

『どんな重大事でも放置しておけば、その放置しておくことから利害が生まれ、
 誰かがこちらの味方に立つのである。これが伯爵の政治学であった。』

『咲いたあとで花弁を引きちぎるためにだけ、
 丹念に花を育てようとする人間のいることを、清顕は学んだ。』

そして、この物語のテーマを暗示しているような気がする次の文章…。

『生と思想が同一のものであるような哲学をおしひろげれば、
 無数の生の流れを統括する生の大きな潮の連環、
 人が「輪廻」と呼ぶのも、一つの思想でありうるかもしれないのだ。』

人生のこの時期に、本棚で偶然、三島由紀夫の本を見つけたのも、
何かのご縁かもしれません。物語の続きを根気よく読むことにします。

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)