しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「自己犠牲」の政治思想

『日本の財政健全化と社会保障制度の持続性の維持という課題は、
 まだ生まれていない将来世代も含む複数の世代間での
 巨大な「救命ボートのジレンマ」である。』

今月12日の日経新聞「経済教室」には、このように書かれていました。

財政悪化をこのまま放置すれば、日本という国は長期間にわたって低迷し
将来のすべての世代が継続的に不利益をこうむることは「自明の理」として、
私たち「現在世代」が自己犠牲的な精神を発揮して、
増税社会保障支出の削減によって財政を健全化するならば、
将来の日本の経済社会は安定し、
これから先の何世代もの人々の生活は改善する、
つまり、財政再建の問題はまさに「救命ボートのジレンマ」の構造を持つと
論考の執筆者である小林慶一郎・慶大教授は述べられていました。

ところが、「将来世代」の人々はまだ成人していないか、
または、生まれてすらいないので、
財政再建についての政治的意思決定に参加できず、
財政の問題は「現在世代」が自発的に自己犠牲的な改革を実行するか、
問題を先送りして将来世代に犠牲を押し付けるか、を選択するしかありません。

そこで、小林教授は、
我々が自発的に自己犠牲的改革を決意し実行するには、
現在世代の快適な私生活よりも、
世代を越えた「社会」の持続的発展により大きな価値を置く
何らかの「政治思想」を持っていなくてはならないと指摘されています。

では、その「政治思想」とは何か?
小林教授は、「共和主義」または「公民的自由主義
という言葉で説明されていますが、
これはどうやら、フィレンツェの思想家ニッコロ・マキャヴェリが唱道した
「国家を次世代に受け継ぐ意思や、そのために自己犠牲をいとわない精神」、
=「徳(ヴィルトゥ)を基盤とする政治思想」に由来するようです。

マキャヴェリといえば、
「天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。」
という名言にも象徴されるように、
「権謀術数」の政治思想家だと私は思っていましたが、
今回の論考を読んで、その認識を改めた次第です。