NHKテレビテキストの100分de名著『良寛詩歌集』を読了しました。
番組のゲスト講師は、龍宝寺住職の中野東禅さんでした。
テキストを読んで一番印象に残ったのは、やはり良寛の「死生観」でした。
具体的には、中野住職の次のような解説がありました。
『老いや病、死、災害から人間は逃げようがありません。
だったら、逃げようのない現実から眼をそらさずに、
そこに肚を据えて、とにかく今を精一杯大切に生きていくしかない』
---これこそが、良寛の死生観です。
この死生観が見て取れるのが、良寛の次の「形見の歌」とのことでした。
(似たかたちの二首が伝わっているそうです。)
・形見とて何か残さん春は花山ほととぎす秋は紅葉ば
・形見とて何残すらむ春は花夏ほととぎす秋はもみぢ葉
個人的には、私は後者の歌のほうが好みですが、
いずれにしてもこの歌は、「良寛一代の傑作ともいわれる名歌で、
この歌からも人間は自然の一部であり、そこに命が還っていく--
という良寛の死生観が見て取れる」、このような中野住職の解説がありました。
そして、清貧に生きた良寛の、次のような歌も印象的でした。
・たくほどに風がもてくる落ち葉かな
(わずかな煮炊きに必要な燃料は、風に散る落ち葉で足りるのです)
う~む、現代風に言えば、「究極のミニマリスト」といったところでしょうか。
凡人の私には、とても真似のできない生き方ですが、
次のような番組HPの解説を読むと、
良寛の詩歌に「生きる原点」を見つけることができるような気がします。
自分を見失わないためには、自分なりの「座標軸」を持つ必要があるのですね…。
『ともするとマイナスにもみえる「貧しさ」や「孤独」は、
時に自分を見失わないための座標軸を与えてくれるのだ。
そこにはモノや情報にあふれた現代人が忘れてしまった洞察がある。』