『春ほど待たれる季節はなく、春ほど待たされる季節はない』
昨日、「退職慰労会」に出席した私は、皆さんから、
「お世話になりました」とか「ご苦労様でした」と声をかけられました。
有難いという感謝の気持ちと同時に、
このまま春が来て皆さんとお別れするのが、名残惜しい気持にもなりました。
さて、気を取り直して、今日は「自己啓発・勉学」日記を書きます。
人手不足が進み労働需給が逼迫する一方で、企業収益は増大している現在、
賃金が上昇しないのは、賃金を払う当事者である企業が悪いのではないか。
世間一般にはこのように言われていますし、私もそう思っていました。
いわく、企業は、
「収益を従業員の賃金上昇に還元せず内部留保をため込んでいる」、あるいは、
「必要な労働力をできるだけ賃金水準の低い非正規で賄おうとしている」など。
ところが、どうやらそうでもないことが、
今月2日の日経新聞「経済教室」に掲載された
小峰隆夫・法政大学教授の論評を読んで理解できました。
小峰教授は、現実の企業収益が大幅に改善したにもかかわらず、
企業の長期的な将来期待が改善しないのは、
多くの企業が近年の収益改善は一時的なものという
慎重な見方をしているからではないかと指摘されています。
それでは、賃金を引き上げるためにはどうすればよいのか?
小峰教授は、残念ながら、賃金を直接引き上げるための政策は
基本的にはないと考えるべきで、
「規制改革で民間企業の活動範囲を拡大する」、
「雇用の流動性を高めて生産性を引き上げる」、
「企業の技術開発力を高める」といった正統的な成長政策を地道に進め、
賃金が少しでも上がりやすい環境を整備することが基本である、
このように述べられています。
そして、むしろ注意すべきは賃金上昇への期待が大きいあまり、
「政府が企業に賃上げを要請する(逆所得政策)」、「最低賃金を引き上げる」、
「同一労働同一賃金を進めることにより、非正規の賃金を引き上げる」
といった直接的に賃上げを目指す非正統的な政策手段を
とらないようにすることだと指摘されています。
なぜ非正統的な政策手段をとったらいけないのかについては、
次のような具体的な解説がありました。
・政府が民間企業に賃上げを求めるのは、
企業の長期的な経営方針に政府が介入することになり、
自由主義経済にふさわしくない。
・最低賃金は、賃金の低廉な労働者について
労働条件の改善を図ることが本旨なのに、これを無理に引き上げると
肝心の賃金の低廉な労働者の雇用量を削減する動きを誘発しかねない。
・同一労働同一賃金は働き方改革を進めるうえで重要な考え方だが、
非正規の待遇向上と、正規の待遇が非正規に近づくことにより
初めて実現するものだから、賃金引き上げにつながる保証はない。
う~む、こうして並べてみると、なるほどそういうものかと思います。
小峰教授の論評を読んで、賃金上昇のためには、
正統的な成長政策を地道に進めるしかないことがよく分かりましたが、
時間がかかりそうで、もどかしい気持ちになります。